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建築家がビジュアル化したデトロイト市の都市デザイン──鍵となる分断されたコミュニティの再活性化とは?

[ゲスト]スティーブン・ルイス氏(デトロイト市都市計画局、Thinking Leadership創設者) 前編

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 入山章栄氏と佐宗邦威氏がイノベーションとクリエイティビティを包括的にとらえようとする本連載。その両氏が今重視しているのが、クリエイティビティにおける「都市の役割」だ。その意味で注目したいのが、米国ミシガン州のデトロイト市だ。かつては自動車産業の中心として知られた同市だが、その後は自動車産業とともに市も衰退し、2013年には財政破綻を経験。全米でも最も危険な都市とさえ言われた。しかし、そのデトロイトが今少しずつ復活しつつあるのをご存知だろうか。しかも、それを牽引するのは建築家による新たな都市の作り方「アーバンデザイン」と言われるものだ。そして多くのデザイナー・クリエイターが移り住んできている。  今回のゲストであるスティーブン・ルイス氏(Steven Lewis、デトロイト市都市計画局、Thinking Leadership創設者)は、まさにそのデトロイト市の再構築を主導するキーパーソンである。現在、デトロイト市を地域住民が誇りを持ちアートを楽しむ都市にと尽力するルイス氏に、その再生の鍵を聞いた。鼎談の模様を2回に分けて紹介する。

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政治的な混乱で人々の関心が「都市」や「地域」に向かうアメリカ──デトロイト市長がまず取り組んだ「アーバンデザイン」

スティーブン・ルイス氏(デトロイト市都市計画局、以下敬称略):日本には初めて来たのですが、今回は京都と東京に立ち寄りました。日本はいい国ですね。豊かな文化があって、それが人々の価値観や社会に反映されていると感じました。細部に意識を向けたり、周りを尊重したりといった文化が何世代にも渡って人々の意識に染み込んでいて、デザインやコミュニケーションの下地になったりしているのかなと、感じます。

佐宗邦威氏(BIOTOPE 代表取締役社長、以下敬称略):そうおっしゃっていただけると嬉しいです。

ルイス:残念ながら、アメリカにはそういったものがありません。そして現在、ご存知の通り政治が混乱していて、利害が一致せず、アイデアがあってもそれが妥協点や合意点に辿り着かないんです。そこで人々の関心が「国家」から薄れ、逆に自分たちがコントロールしやすい「都市」や「地域」に向かっているという流れが起こっています。

入山章栄氏(早稲田大学ビジネススクール准教授、以下敬称略):政治的な変化、混乱によって「人々の意識がローカルに向かっている」ということですね。日本でも2011年の東日本大震災後、同じように人々の関心がローカルに向かったと私は理解しています。ルイスさんの今日のお話は、日本のローカル再生にも示唆がありそうだと、期待しています。

佐宗:アメリカのような大きな政治分断の結果、逆にローカルに意識が向くとは社会が持っているある種の“自己浄化システム”のようなものなのかもしれませんね。今、日本にいてもデトロイト市が復活を遂げつつあるということが聞こえてきます。

一方、日本でも地方都市で大きな人口減少に直面していますし、今後消失していく集落も増えていくと言われています。その中で、一部の若い人が地方に新たなモデルを作ろうという動きも起こっています。あの、デトロイト市が再生に向かっているという現状は多くの日本人に希望とインスピレーションを与えると思うのです。いったい、デトロイトでは何が起こっているんでしょう?

ルイス:ここで『人々の意識が変わって、ボトムアップでデトロイトの復活が始まったんですよ』とかっこよく言えればよかったのですが、実際のところ、デトロイトの再生の始まりは、2014年に選出されたデトロイト出身で弁護士のマイク・ダガン市長の主導によって始まったものです。でも、デトロイト市の場合はそれも自然なことだろうと思います。40~50年間、都市の衰退にもがき続けてきた結果、人口流出も激しく、人々の市政に対する期待もとても低いところからのスタートだったのです。

ダガン氏は、市民が市長というものにすでに期待しなくなっていることを知っていたので、選挙前に300以上の家庭を無作為に訪れて、直接対話を行いました。膝を突き合わせて話をすることで信頼を勝ち取り、市長に選ばれたのです。その結果ダガン市長は、今までの市長とは真逆の方針である、「デトロイト市に人口を取り戻す」ということを始めました。そして、そのために必要だったのが「アーバンデザイン」なのです。

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分断されたデトロイト市のコミュニティを“密集”で再活性化する「アーバンデザイン」

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