事業の強みを活かす「クリエイティブジャンプ」とは
そのような理解をした上で、事業の生活者価値を本当に作れている事業は実は多くないというのが、荒井氏達の持論だ。ここで必要となるのが、クリエイティブジャンプと呼ばれる視点である。
例えば、新しいサービスや、新しい事業を検討する時、昨今であれば、デザインシンキングと言われるように、生活者を徹底的に理解し、真の問題点を出す方法がある。その一連の中でカスタマージャーニーを設計し、課題ごとに対策を練っていくだろう。重要なアプローチではあるが、このやり方のメリット・デメリットを正しく理解しておく必要があると言う。
生活者を中心に考えることは、分母となる問題解決に有効ですが、分子となる価値創造には、自社事業の強みを考えることが同時に重要となります。それは、自社の強みを再解釈し、他社が真似しづらい戦略を作ることです。当たり前だと思っていることが実は強みになることも少なくありません。
博報堂が培ってきたクリエイティビティとは、生活者のニーズに応えるだけでなく、それと商品・ブランドの強みとの交わるポイントを見つけることであり、そのポイントから独自性のあるアイディアを作ることをクリエイティブジャンプとしています。(荒井氏)
新規事業は「スモールスタート」よりも「シンボリックスタート」が適している理由
続いて語られたのは、事業の進め方だ。荒井氏が推奨するのは、シンボリックスタート。スモールスタートと言われるように、なんとなく低コストで実験的にやることはいいが、それだけでは従業員のモチベーションも上がらない上、社内で注目を集めない。だから上手くいかない。
低コストで実験的であるものの、自社が考える、事業の生活者価値を象徴するサービスを作るのがシンボリックスタートだ。シンボリックスタートを作る意気込みでやらない限り、社内稟議を通すことも困難で、通ったとしても次フェーズの投資もまたハードルが高くなる。