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メルカリが実践する「サロン」による共創型サービスデザイン

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 メルカリはユーザー参加のイベント「メルカリサロン」を実施している。11月29日に開催された第四回目の会では、応募者600名から選ばれた54名が参加した。メルカリについて語りたい、ノウハウを他の人と共有したい、中の人と話をしてみたいといったファンが、和気あいあいとした雰囲気で会話し盛り上がった。こうしたカジュアルな場は、テック企業によるユーザーとの交流のスタイルとして定着しそうだ。

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 参加者はメルカリのアプリからの応募から招待された54名。今回は約600名の応募があり、その中から利用状況などをもとに選ばれた。運営チームの石川真弓さんは「取引件数100件以上のヘビーユーザーの方々がほとんど。最高は取引件数が7000件の方です」と語る。

 前回は200名ほどが集まりクイズなどで盛り上がる形式で行われたが、今回は、オープニングスピーチとユーザーによるトークの後、それぞれのテーブルごとに参加者同士が語り合う座談が中心。5〜6名のテーブルに分かれ、それぞれの島にメルカリ社員が入り、じっくりと会話をするという形式だ。

 はじめにメルカリ執行役員の 田面木(たものき)さんがあいさつ。田面木さんは、メルカリ日本事業のCEOとして就任したが、初めはカスタマーサポートを担当してきており、ユーザーとの電話の対応やメールによる返信などもおこなってきたという。「ひとりひとりのお客様の声を聴くこと心がけてきました。今回はダイレクトな場でもあるので忌憚のない意見を聞かせてください」(田面木さん)

 続いて、参加者による「私のメルカリテクニック」のプレゼンタイム。パワーユーザー数名が壇上に上がり、それぞれのメルカリのノウハウが披露された。はじめに登壇した徳富美紀さんは。元広告代理店で販売の経験を持つ。広告やマーケティングのキャリア、購入率を1.5倍にしたライティング術を紹介。女性に購入してもらうためには、写真だけでは伝わらない素材感、サイズ、季節感などをできるだけ丁寧な言葉で説明し、流行りのワードなどを入れるなどの工夫が必要だという。
「購入希望者の疑問を払拭することや、情報をなるべく多く書くことで、検索にもヒットしやすくすることが大事です」(徳富さん)

発表者のみなさん

 企業でエンジニアを務める西脇淳人さんは、3Dプリンタを使ったモノづくりによるメルカリのビジネス活用法を披露。趣味の熱帯魚用のグッズなど、ニッチながらも自分が「これがあれば」と思うものは、3Dプリンタでどんどん作る。3Dプリンターがあれば、多品種小量生産のメーカーになることができて、自分が考案したモノが売れることで、ビジネス上の気づきや発見もあるという。

 他にもメルカリの利用術の本を出している女性による梱包や配送のテクニックの紹介、国産の中古カメラに工夫をこらして販売している男性の経験談などが語られた。また、中学生の息子さんを持つ母親は、息子さんが球場で選手からもらったボールや、フリーマーケットで譲ってもらった小物を出品し小遣いを作っている様子を紹介した。

 続いてメルカリのスタッフから、今後のサービス改善のポイントが公開された。最近力を入れている施策として、全国32000箇所で展開しているクロネコヤマトの宅配ロッカー、お客様の疑問に回答するAIチャットボットや、ユーザーから要望の多かった評価機能の改善、出品画像の枚数を増やすことなどについても紹介された。

 一方では「メルカリを嫌いになる理由」を挙げた参加者もいた。「過度な値下げ交渉が来ていらつくこと」「理不尽に低いレビューで心が折れる」「一度ついた低い評価が後々まで残る」などの意見も出された。金額交渉や評価については課題もあり、メルカリからは今後、AIなどの活用で改善していきたいというコメントが出された。

 最近テック企業のサービスでは、顧客体験(CX)が重要視されてきている。メルカリのサロンも、顧客からのフィードバックの場ともいえるが、従来のIT企業のユーザー向けセミナーにような堅苦しい進行ではなく、オープンでカジュアルな雰囲気を作ることに成功している。

 今回参加したメルカリのメンバーによれば、メルカリサロンは、顧客をサービスデザインのプロセスに引き込み、サービスを共創していく「co-design」の場であるという。

 サブスクリプションビジネスなどによる継続的な関係によるサービスの改善、欧州の行政がおこなう「リビングラボ」のように、顧客や市民を巻き込んで共創型でサービス・イノベーションをめざす動きが活発化している。メルカリサロンもそうした流れのひとつと言えるだろう。とくにメルカリのような、顧客自身が出品し工夫を凝らすようなビジネスの場合、「co-design」(共創型)は新しい価値の創造につながるかもしれない。

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京部康男 (Biz/Zine編集部)(キョウベ ヤスオ)

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