日本のMaaSに危機感。影響は周辺産業を巻き込んで拡大する
──近年になって、急速にMaaSに対する興味、関心が高まってきたように思われます。日高さんは現在の日本におけるMaaSの捉え方や位置づけについてどのようにお感じですか。
MaaS Tech Japan 代表取締役 日高洋祐氏(以下、敬称略):世界に比べると少し遅れているように思っています。世界各国で交通系のカンファレンスに行くと、もれなくMaaSがホットワードになっており、それを裏付けるかのような多種多様なサービスやモビリティが発表されています
しかし、日本では話題にはなっても、まだ先の未来の話として漠然と語られていることが多い。将来の深刻な遅れにつながるのではないかと不安になるほど現実味に差があるんです。昨年末に本を共著にて上梓したのも、そうした危機感があったからです。
Amazonなどの例を出すまでもなく、これまでもスタートアップでなにか新しいものが生まれた瞬間、間を置かずに大きな潮流がやってきて、世界的競争に負けてしまうという例は山ほどありました。そんな経験を何度もしているはずなのに、未だ「スタートアップが実証的にやっている」という認識の方が業界にも多い。
そこで、実際に海外で展開されている事例を紹介するとともに、それが日本の社会や経済にも影響してくることを伝えたいと思いました。欧米・中国と日本とでは交通の考え方もまったく異なるので「日本には影響ない」と思われがちですが、それを自分ごととして考えてもらうために、あえて業界ごとにどんな変化が起きるのか予測も含めて紹介しました。
そして、影響を受けるのは業界内だけではないということもメッセージとして盛り込みました。例えばWebメディアの普及によって新聞・出版業界は大きく変化しましたが、印刷業界はそれ以上に劇的に変化しています。要は、モビリティ革命は同業界だけでなく、周辺の産業にも大きな影響を与えるというわけです。もしかすると新しい参加者を加えて全産業でシャッフルして再編成するくらいの大きな変化になる可能性もあります。