“正解のコモディティ化”が蔓延する新規事業開発──「未来視点が必要な理由」と「問いの定義」とは?

第5回

 テクノロジーの急速な進化に伴う世の中のデジタル化により、生活者や企業を 取り巻く環境は急速に変化しています。テクノロジーが次々に産業構造を破壊し、異業種に参入・競争が激化するなど、自社の中核事業がディスラプトされる側になるリスクはかつてないほど高まっています。
  企業は、持続的な成長のために新規事業開発・イノベーション創出に積極的に取り組んでいますが、多くは成果に繋げられていません。その大きなの要因のひとつに、新規事業開発で取り扱うべき「問いが枯渇」していることがあると考えています。今回は、新規事業として取り扱うべき課題がない時代における新規事業開発・イノベーション創出の重要なポイントを解説していきます。

[公開日]

[著] 小池 祐介

[タグ] 事業開発 ビジョン イノベーション

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“正解のコモディティ化”により起こる、新規事業開発にとっての「問いの枯渇」

 新規事業を開発していく上で最も重要なプロセスは何か?

 私は「問いの定義」であると考えています。つまり、社会・個人のどのような「課題」を解決していくべきか?を考えることです。

 しかし、現在はあらゆる課題が解決されており、新規事業として取り扱うべき課題がない時代になったと感じています。そもそも企業が新規事業として取り扱うには、一定以上の規模で儲かること、そもそも解決できることが条件となりますが、そういった課題はすでにレッドオーシャンとなっている可能性が高いです。なぜなら、現在多くの企業が実施しているユーザー調査・市場調査による課題発見、戦略設計のプロセスは、再現性を高めるために標準化・フレームワーク化されており、きちんとしたプロセスを経ることで「正解」にたどり着くことができるからです。

 ただ、多くの企業が「正解」にたどり着く可能性が高く、結果として、同じような課題に同じような解決策で取り組みレッドオーシャンになってしまうというわけです。つまり、山口周さんが『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』で述べている通り“正解のコモディティ化”が起こり、新規事業として取り組むべき「問いが枯渇」しているのが現在である、と言えます。

 古くは、マイケル・ポーターが競争戦略(差別化・コストリーダーシップ)などで述べている通り、新規事業・イノベーションには独自性が重要である点には大きな異論はないと思いますが、そのための手段が標準化されたがゆえに事業の独自性が失われつつあるのはなんとも皮肉な状況です。

 では、どのように新規事業・イノベーションにおいて独自性の高い「問いの定義」をしていくのか?

 ポイントは「未来視点」にあると考えています。未来の視点で新規事業を考えると、従来の手段では想像できない課題を発見できるようになります。「VUCA*1と言われている時代に未来なんてどうなるかわからないし、そこから事業を考える意味なんてあるの?」「未来予測など無意味だ!」という意見を持つ方もいるかもしれません。しかし、私は、先行きが見えない時代だからこそ、新規事業は「未来視点」で考えるべきであると考えています。

 新規事業を「未来視点」で考えるべき主な理由は4点あります。

  1. 未来には解決されていない社会課題が潤沢にある
  2. 未来において利益を創出しつづけられる新規事業が考えられる
  3. 今までは察知できなかった「未来の兆し」が感じられる
  4. ビジョンドリブンな新規事業開発できる

*1:VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字からつくった造語で、現在を表現する言葉として使用されている。

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