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スティーブ ・ブランク氏が語る、大企業の新事業立ち上げ新手法「Innovation Pipeline」とは

ゲスト:スティーブ ・ブランク氏、ラーニング・アントレプレナーズ・ラボ株式会社 堤孝志氏【前編】

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 新事業を科学的アプローチで実践する「顧客開発モデル」を体系化し、アントレプレナーが方法論を学ぶための最初の書籍『アントレプレナーの教科書』を出版して大きな話題になったスティーブ・ブランク氏。氏の6年ぶりの来日にあたり、著書の翻訳を行ったラーニング・アントレプレナーズ・ラボ株式会社の堤孝志氏が、新規事業立ち上げに関する新手法や書籍刊行後のスタートアップを取り巻く環境変化を聞いた。前編では、大企業内の新規事業開発モデル「Innovation Pipeline」や「Hack for X」に関して聞いた。

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スタートアップにはできるが、大企業には構造的にできないこと

ラーニング・アントレプレナーズ・ラボ株式会社 堤孝志氏(以降敬称略):ブランクさんはこれまで起業家、スタートアップの研究をなさっていましたが、昨今はリーンスタートアップや顧客開発モデルを活用して、大企業内の「新規事業量産」の仕組み作りや、業務改善や社会課題の解決への応用に取り組んでいらっしゃいますね。Innovation Pipelineという、大企業内の新規事業開発モデルを提唱されていますが、これはどういったものなのでしょうか。

スティーブ・G・ブランク氏(以降敬称略):Innovation Pipelineは大企業が被るディスラプション、つまりデジタル化の影響でビジネスに大打撃を受ける状態への対応の調査から生まれました。スタートアップと大企業は全く違い、スタートアップにできることでも構造的に大企業ではできないことがかなりあります。

 まず、大企業は既存のビジネスモデルを遂行するのに適した形になっています。大企業は安定的に仕事を行う方法や、顧客、チャネル、価格設定、競合を知っています。KPIやOKR、マトリックス、マニュアルなど、業務を効率的に進めるためのあれこれも整っています。しかしそれは全て、体系的に手順が整った、継続的な仕事のために役立つものであり、イノベーションには役立たないのです。

 既存の仕組みの呪縛のなかでも新しい発想を得たという“ヒーローの逸話”はよく聞きますが、その話が教えてくれるのは、全ての企業に存在しうるこのようなクリエイティブ人材を生かす、正式な方法というのはどこにもないということです。既存の技術や製品開発プロセスとイノベーションのプロセスはスピード感が全く異なるので、クリエイティブ人材が新しい事業をボトムアップで創ることは、例外でしかないのです。

 さらに、ここ4、5年で大企業がインキュベーター、アクセラレーター、ハッカソンを始めていることにも気づきました。大企業もイノベーションを起こすために、色々と考えているんです。ただ、一歩引いてみるとそれらは全てがバラバラの活動でエンドツーエンドのプロセスにはなっていません。社内資源の活用によるアイデア発案から迅速な事業化までを一気通貫させたステップでLEANなプロセス。それがInnovation Pipelineです。

スティーブ・G・ブランクスティーブ・G・ブランク氏
シリコンバレーの元シリアルアントレプレナー。CEOを含めてさまざまな役職で8社のベンチャー企業の創業と立ち上げに携わる。起業家活動から引退後は、アントレプレナーシップ教育に従事。スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール、コロンビア大学にて顧客開発とアントレプレナーシップについて教鞭をとる。顧客開発モデルの実践プログラム「リーンローンチパッド」を開発。2009年スタンフォード大学マネジメントサイエンスエンジニアリング学部教育者賞、2010年カリフォルニア大学バークレー校Earl F Cheit優秀教育者賞を受賞。

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