インタビュー 人事と経営のジレンマ

なぜ現場との対話を大切にする経営者は「話し言葉」を使うのか──オイシックス・ラ・大地のPMIでの実践

ゲスト:オイシックス・ラ・大地株式会社HR本部 人材企画室室長 三浦孝文氏【前編】

 連載「人事と経営のジレンマ」では、組織論・経営戦略論研究者の埼玉大学大学院宇田川元一准教授と、人材育成・採用・組織開発に関するサービスを提供するリクルートマネジメントソリューションズにて、HR領域における事業開発をリードする荒金泰史氏を連載ホストに迎えます。今回はゲストに、オイシックス・ラ・大地株式会社HR本部人材企画室 室長の三浦孝文さんをお招きしました。前・後編でお届けする記事の前編では、直近の経営統合の中で、どのような組織再編が繰り広げられたのか、詳しくお伺いしました。

[公開日]

[語り手] 三浦 孝文 宇田川 元一 荒金 泰史 [取材・構成] 西山 武志 [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークスタイル 人事 PMI 対話

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経営陣が大切にした、PMIにおける対話とは

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 荒金泰史氏(以下、敬称略):三浦さんが勤められているオイシックス・ラ・大地は、ここ数年で経営統合を二度行なっていますね。直近での会社組織の変遷について、教えていただけますか。たしか、転職された時期が、ちょうど統合の真っただ中でしたよね?

オイシックス・ラ・大地株式会社 三浦孝文氏(以下、敬称略):私が当時「オイシックス」だった弊社に転職したのが2017年の1月で、その前年末に「大地を守る会」との経営統合が発表されたばかり、というタイミングでした。そこから半年以上、時間をかけて統合に向けてのプロセスを刻み、2017年10月に二社の統合が完了し「オイシックスドット大地」に社名が変わりました。

 その数か月後、今度は「らでぃっしゅぼーや」との経営統合が決定。2018年10月に二度目の統合を終えて生まれたのが、「オイシックス・ラ・大地」です。私が入ったときは社員数が200名程度、売上規模は230億円ほどでしたが、二度の経営統合を経て、現在の社員数は700名を超え、売上規模も640億円に拡大しました。

荒金:立て続けての統合で、組織内部の混乱などはありませんでしたか。

三浦:「大変だね」と言っていただくことはよくあるのですが、おそらくは外部の皆さんが想像されているほどの混乱はなく、HRの観点から見ると比較的スムーズな統合だったのではないかな、と感じています。

 その大きな要因として考えられるのは、経営陣が統合のプロセスでコミュニケーション、とくに現場との対話を重要視していたことです。統合までのプロセスでは、両社の社員を出し合って合同プロジェクトを立ち上げ、それぞれの行動規範やミッションのすり合わせを丁寧に行ないました。

荒金:統合のプロセスの中で対話を行なうにあたって、具体的にはどのような工夫をしましたか。

三浦:代表の高島(高島宏平。元オイシックス株式会社、現オイシックス・ラ・大地株式会社代表取締役)をはじめとした経営陣が自ら出向いて、「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」の社員たちと直接話をする機会を大事にしていました。経営陣が動くことで、現場のマネジャーやメンバークラスの社員たちにも「対話の場をつくろう」という意識が芽生えていきましたね。

 そのおかげで、統合後の組織は、それぞれの会社のいい文化がうまく混ざり合っているような環境になってきたなと感じます。私が入ったときのオイシックスの離職率は12%ほどでしたが、今は6%程度にまで下がっています。単純に数字で測れるものではないとは思いますが、「組織が落ち着いてきた、いい方向に向かっている」というひとつの指標として捉えています。

 オイシックス、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやの三社は、ともに食材宅配を主な事業として展開してきた会社です。やっている商売自体は同じでも、商品の仕入れ方法やブランドのつくり方は、大きく異なります。そういった差異をお互い理解するため、現場レベルでも毎週のようにお互いの会社を行き来して、ディスカッションをしていました。現場が「統合させられる」のではなく、経営層の意図をある程度理解した上で、「統合に向けて自分たちで動く」その先のお客様や生産者さんにとっての価値を生み出すという意識を持てることが大事だと思い、そのためにできるアクションをプロジェクトメンバーは常に考え、働きかけてきました。

三浦孝文オイシックス・ラ・大地株式会社HR本部 人材企画室室長 三浦 孝文氏

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