企業と顧客のコミュニケーションにおける「三つのアプローチ」
2018年5月に経済産業省が発表した『「デザイン経営」宣言』は、ブランドについてこのように触れている。
顧客が企業と接点を持つあらゆる体験に、その価値や意志を徹底させ、一貫したメッセージとして伝わることで、他の企業では代替できないと顧客が思うブランド価値が生まれる。*1
多くの人にとってこのテキストは妥当なものだろう。ここでのブランド価値をブランドと同義だとすると、ブランディングとは「あらゆる顧客接点で、企業の価値や意志を徹底させ、一貫したメッセージを伝えること」になる。しかしそれは具体的に何をしたら可能なのだろうか? 多くのビジネスパーソンのブランディングの理解もおそらくここで止まっている。
ブランディングはもっと具体的で戦略的な手法として語られるべきだ。先述の『「デザイン経営」宣言』の中で、ブランドは企業活動のあくまで成果であると語られている。そのためには「一貫したメッセージを伝えること」に成功しなければならないというわけだが、その先の道標がない。経営者や事業開発担当者は、いつもここでブランディングに頼りなさを感じるのではないだろうか。
ブランディングが企業と顧客の関係性の在り方であることに間違いはない。そこには企業と顧客のコミュニケーション戦略が関わってくる。ブランディングを再定義するにあたりまずはここから整理したい。
企業と顧客のコミュニケーションにおけるコンセプトは三つある。
一つ目は、企業の強みや特徴をエッセンスとして抽出して、それを顧客に伝えて定着させるための「セールスコンセプト」。二つ目は、市場を分析しターゲット顧客を定め、競合他社と差別化されたポジションを獲得するための「マーケティングコンセプト」。そして、三つ目が、顧客とともに探求するテーマを定め、その探求を通して顧客に体験価値を提供する「ブランドコンセプト」である。そしてこれらそれぞれをCAN型、MUST型、WILL型アプローチと呼んでいる。
*1.出典『「デザイン経営 」宣⾔』(経済産業省・特許庁 産業競争⼒とデザインを考える研究会 2018.5.23 )