産業の枠組みを超え機運の高まる「FoodTech」コミュニティ
大山 貴子氏(株式会社fog代表、以下敬称略):ESG投資、SDGs等、ビジネス環境の変化から、現在多くの企業がCSRではなくビジネス戦略としてサーキュラー・エコノミーへの取り組みを始めています。
シグマクシスでは、「食&料理×サイエンス・テクノロジー」をテーマに新しい価値を創造するイベントであるスマートキッチン・サミット・ジャパンなど、様々な取り組みをされていますよね。
田中 宏隆氏(株式会社シグマクシス、以降敬称略):この5年ほど、世界中で「食×テクノロジー」をテーマに、フードイノベーション、FoodTech、フードサイエンスを取り上げたカンファレンスが盛り上がっています。また「CES」、「IFA」などの全般的なテック系カンファレンスに加え「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)」においても、FoodTechに関連するセッションや展示が出てきています。さらに、美食の国イタリアでは食とテクノロジーを語る「Seeds&Chips」というフードイノベーションカンファレンスが行われるなど、従来の食品展示会とは異なる場が増えています。
我々はスマートキッチン・サミット・ジャパンを2017年から始めたのですが、これは2015年から米国シアトルで開催されている、FoodTechに特化したグローバルカンファレンスの先駆けである「Smart Kitchen Summit(SKS)」の日本版です。SKSはキッチン家電のIoT化がきっかけとなり始まったのですが、我々は2016年に参加して話を聞いた際に、食のあり方を本質的に変える、食べ物自体をも変化させうる取り組みだと感じました。これを技術も豊かな食体験も持つ日本でやれば、何かが変わり大きな動きになるのではないかと思い、SKSの創設者であるマイケル・ウルフ氏に直談判して、日本での開催にこぎつけました。
大山:昨年のスマートキッチン・サミット・ジャパンも盛況でしたね。
田中:昨年は500名弱、200社近くが参加し、60名ほどのスピーカーが登壇してくださいました。食品・飲料メーカー、家電メーカー、食関連ベンチャー、食メディア・サービス、商社・流通・小売、住宅・インフラ・キッチン、外食、投資家・アクセラレーター等、様々な方々が集まって食の進化について語り合いました。
大山:昨年のスマートキッチン・サミット・ジャパンは、どのような特徴があったのでしょうか。
田中:多様な業界のインフルエンサーが登壇するようになってきたことです。例えば「Google Food Team」が登壇し、サーキュラー、リジェネレイティブな食の設計と、食の課題解決のための取り組みを発信しています。「WeWorkフードラボ」からは、食に関するあらゆることを改善・向上させるために、起業家、業界エキスパート、投資家のコミュニティを構築しているという発表もありました。