中国の事例にみる、デジタル技術による介入の課題
最後に、中国の事例とも比較した上で、社会の仕組みに起因する介入の違いの論点を紹介します。
中国では、シンガポールと類似のアプリに、いくつか特徴的な機能が追加されたものが広まっています。まず、シンガポールのアプリでは追跡対象となっていない個人の位置情報が、接触情報とあわせて統合されています。これにより、誰とどこにいたかというプライバシー性の高い情報を、完全な形で可視化することができます。次に、過去の行動履歴や接触者等の情報をもとに、個人の新型コロナウイルス感染可能性が赤・黄・緑の信号色で表示されます。地下鉄に乗る時や店舗へ入る時に、これらの色の提示を求められ、緑でなければ拒否されるといった運用がなされています。氏名や国民IDとも紐づけられているといわれ、詳細な個人情報と関連づけた形で感染や行動の管理が行われています。