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デジタル技術の活用による行動変容

「デジタル×行動変容」をビジネスに活かすために必要な“経営戦略”と“組織作り”とは?

第5回

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 本連載「デジタル技術の活用による行動変容」もいよいよ第5回。第1回から第4回まで、国内外の最新事例を交えながら、デジタルによる行動変容技術の発展を紐解いてきました。
 今回は、デジタル×行動変容の実現に必要な組織力や課題について、海外の動向や事例を紹介しながら論じていきます。また、行動科学を明日から事業に取り入れるために、どのようなことができるかを一部ご紹介します。

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ウォルマートにみる、行動科学のビジネスへの応用

 あなたの会社に行動科学の専門家はいますか。担当する商品やサービスを展開する際、たとえば「その商品によって得られる効果をアピールする方が消費者に響くか、それとも現状の問題をアピールした方が効果的か」について、社内の誰に聞けばよいかわかりますか。

 インセンティブ、コミュニティ、メッセージングなど、これまでお伝えしてきた行動変容の理論やテクニックは、行動科学(Behavioral Science)という学問として整理されます。行動科学は、人の行動に共通する法則性を見つける学問であり、心理学・経済学・認知科学・社会学・脳科学など、幅広い学問領域にまたがる学際的な分野です。

 行動科学の専門家は、ここ10年ほどで、アカデミアに留まらずビジネスや政策の分野へと大きく活躍の場を広げてきました。GoogleやFacebook、Microsoftといった世界的テクノロジー企業をはじめ、金融や小売など、あらゆる領域で行動科学チームが立ち上げられ、成果を出しています。

 たとえば、米国の大手小売企業であるWalmart(ウォルマート)は、ここ10年ほどの間に、行動科学とデータ分析を基軸とした事業開発に大きくシフトしました。同社では、以前から新たな取り組みをまず試験的に導入して効果を計る「ABテスト」や「ランダム化比較試験(RCT)」といった手法を取り入れていましたが、その重要性が十分に理解されているというわけではありませんでした。しかし、小売業界の競争が激化する中で、経営層からのトップダウンで改革が進められ、行動科学の取り入れや、実験とデータに基づく戦略を徹底する社内文化が浸透していきます。組織改革も行われ、行動科学の専門家が加わり、商品開発部とABテストを行う部門が統合されたのです。

 現在では、商品マネージャーや行動科学者、分析担当者が、部門の垣根なく共同でゴール・アイデア仮説・評価指標を検討します。エンジニアも議論に参加し、科学的な効果が計れるよう適切にテストを設計します。そして、テストマネージャーがこれらのプロセスを監督・管理します。結果、すべての商品や新機能がABテストを経て市場展開されるようになりました。行動科学の取り入れや科学的な効果測定が事業開発における優先事項に位置づけられているのです。

 ウォルマートの具体的な取り組みの一例をご紹介します。同社傘下の会員制スーパーマーケット「サムズ・クラブ」は、20ものABテストを6つのラウンドに分けて実施し、どのような取り組みが長期的な固定客をもたらすか、科学的に分析しました。その結果、顧客との長期の関係構築には、リピーターへの報酬制度が効果的であること、低コストで高い効果が期待できることがわかりました。この結果をもとに、プログラムを全店舗に展開し、大きな成果をあげました。

 ウォルマートでは、期待する消費者行動と実際の消費者行動を比較し、そのギャップを埋める施策を分析すること、そしてその影響を科学的な手法を用いて測定し、費用対効果に基づいて事業に反映していくことで、常に進化し続ける体制ができています。同社の行動科学チームは、70%もの時間を、具体的な行動変容のソリューション検討に費やしているそうです。

 筆者(藤井)が所属するアクセンチュアでは、2019年にJulie Sweetが新CEOに就任して以来「Digital is Everywhere(デジタルは当たり前)」を企業戦略の中核として掲げていますが、Walmartの事例はまさに「行動科学 is Everywhere」な取り組みだといえるでしょう。

図1 ビジネスへの行動科学取り入れ成功のポイント著者の藤井・一宮が作成

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世界中の企業で行動科学チームが活躍している

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この記事の著者

藤井 篤之(フジイ シゲユキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

一宮 恵(イチミヤ メグミ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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