あらゆる事業が転換可能なサブスクリプション“4つのモデル”
佐川氏は、自身が代表取締役社長を務めるテモナ株式会社を、2008年にサブスクリプション型に転換した。それは、リーマンショック後に、月当たりの売り上げが半減し、会社が危機的状況に陥ったからである。今後、また社会的に厳しい状況になっても安定的にビジネスを行う方法を模索して、たどりついたビジネスモデルがサブスクリプションビジネス(サブスクビジネス)だったという。
会員からの継続課金によって定期的な収益を得るサブスクビジネスは、ストック型のビジネスモデルだ。単発の受注や販売で収益を上げるフロー型とは違い、大きな外的要因の変化があったときにも一気に売り上げが激減することは起こりにくく、せいぜい成長スピードが鈍化する程度である。逆にいえば、フロー型のビジネスはリスクを抱えながらやっている状態だと佐川氏は指摘する。現に、今回のコロナ禍でもテモナ株式会社は、大きなダメージを受けていないという。
では、どうやって既存事業をサブスクビジネスに変換したらいいのだろうか。また、どんなビジネスを始めればいいのだろうか。講演で佐川氏は、サブスクビジネスを、以下のように4つのモデルで分類して説明した。
- 定期購入モデル:毎月一定額の料金を支払っている会員に対して、特定の商材を販売する。新聞や雑誌の定期購読、サプリメント、ウォーターサーバーなど。
- 頒布会モデル:事業者側があらかじめコース設定を行い、毎月一定額の料金を支払っている会員に対して、毎回異なる商材を販売する。日本郵便の「ふるさと会」、オイシックス・ラ・大地の「おいしっくすくらぶ」など。
- 会費制モデル:毎月一定額の料金を支払っている会員に対して、サービスやコンテンツを利用する権利を貸与する。SaaS、レンタル業、実店舗(スポーツジム、教室、エステサロンなど)など。
- レコメンドモデル:客一人ひとりの嗜好や状況に合わせて、専門家が商品やサービスを提案(レコメンド)し、提供する。エアークローゼットの「airCloset」など。
どんな業界のどんな事業であっても、4つのモデルのどれかに移行することができると佐川氏はいう。
ただし、商材によって向き不向きはある。一般的に難易度が高いものがレコメンドモデルだ。プロフェッショナルが顧客ごとにふさわしいものを見繕うのが特徴のため、気に入らなければ解約される可能性がある。また、多くの種類の商品を用意する必要があるため、在庫リスクを抱えてしまう。手間もシステム投資も大きくなってしまうモデルなのだ。一方、商材にもよるが、取り組みやすいのは定期購入モデルや会費制モデルだと佐川氏は説明する。