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「大企業による新規事業」のリアル

なぜ帝人の新規事業でBtoCビジネスを生み出したのか──研究者が立ち上げたNOMONの挑戦

第13回 ゲスト:NOMON株式会社 山名慶氏、狩野理延氏

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 新規事業開発に携わる方へのインタビューを通じて、大企業内の新規事業開発における美学を探る本シリーズ。今回のゲストは、NOMON株式会社代表取締役CEOの山名慶氏と、同社取締役COOの狩野理延氏です。  NOMONは帝人株式会社の子会社として2019年に創業した、「老化」に関するBtoCビジネスを展開する企業です。2018年の帝人の創業100年がきっかけで誕生したというNOMONの事業内容と、大企業で企業内起業を行う大変さとメリット、大企業で新規事業が生みだすために必要なことを聞きました。聞き手は本気ファクトリー株式会社代表取締役の畠山和也氏です。

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帝人の新規事業によるBtoCへの挑戦

畠山和也氏(本気ファクトリー株式会社 代表取締役、以降敬称略):NOMONは「老化研究の最先端を食卓に」を掲げて、製品をEコマースで販売なさっています。現在の商品ラインアップは2種類のサプリメントですよね。どんなものなのでしょうか。

山名慶氏(NOMON株式会社 代表取締役CEO、以降敬称略):NMNとは、地球上のバクテリアを含めた全ての生命体が生きていくために必須の物質であるNADを補填できる抗老化候補物質です。NADはどんな種でも細胞が老化していくと量が減っていっていき、NMNを補えば加齢にともなって生じる疾病の予防や治療に将来的に役立つという、世界中の研究者が認める研究が発表されています。自分たちでも研究してみて確かだと感じたので、NOMONではそのNMNを含有する「NADaltus(ナダルタス)」というサプリメントを最初の商品にすることにしました。それに加えて、本わさびの根茎から抽出された健康成分を含有する「WASAbis(ワサビス)」というサプリを販売しています。

畠山:帝人といえばBtoBのイメージが強い企業です。帝人ファーマという、「医薬品事業」と「在宅医療事業」に強みを持つ子会社もあります。なぜ事業部として立ち上げて販売を代理店などに任せる方法ではなく、子会社化して自社のEコマースで販売しようと決めたのでしょうか。

山名:サプリメントはきちんとエビデンスに基づいた情報と共に届けなければいけません。将来的にはビタミンCのように広く普及させることを目指しており、情報と一緒にお届けするためには、自分たちで売る方がいいと考えました。また今までのBtoBではなくBtoCに挑戦するということで、素早く意思決定をするために子会社化しました。社名も、帝人という名前は一般の方々にとっては繊維やプラスチックのイメージが強いので「帝人○○」とはせずに、ブランディングも含めてイチから挑戦することにしました。

 現状、製品はパートナー企業に依頼して作ってもらっています。NMNを薬品として販売するのであれば自社で製造法から作る必要があり、それを自分たちで最初から作るのは非常に難しいです。しかし、サプリメントとしてNMNに注目したときには、今パートナーになっていただいた企業がもう10年前から研究をしていて作れる状況でした。パートナーの企業は研究を今すぐに事業化するような状況ではなかったこともあり、協業することが双方にとってベストだと考えました。

畠山:山名さんは現役研究者でもあると聞いています。研究者は「自分は研究をする、あとは営業が売ってくれ」という姿勢の人も多いように思いますが、山名さんは軸足をビジネスの方に移していらっしゃいますよね。研究成果を見て研究者としてNMNを広めたいと考えたことはわかるのですが、ビジネスへと発想の転換ができたのが稀有だなと思いました。

 また、神話の時代から不老不死は人類の関心ごとです。ただ、しっかりした研究があるとはいえ、事業化までには様々な困難があったのではないでしょうか。

山名:そうですね。事業化までは非常に大変でした。

畠山:やはりそうですか。事業化までの道のりと、どうやって困難を乗り越えてきたかをお聞きしたいです。

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この記事の著者

フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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