コロナ禍で顕在化した物流の課題
2020年、新型コロナウイルス感染症の影響により、世界的にサプライチェーンが崩壊していった。この時、世界で起きていたことを物流視点で見ると、次のように整理できると佐野氏は言う。
まず、ロックダウン、極端な移動制限のために生産ができない、部品の調達ができないという事態が起きた。また、需要の極端な変化により、医薬やEC販売、宅配が伸びた反面、輸送や観光などの産業が大打撃を受けた。
一方で、デジタル化は大きく進んだ。各企業は以前からDXに取り組んできたが、コロナ禍でオンライン会議、電子決済、ペーパーレス化が一気に進んだ。消費者動向としても、実店舗からEC消費へとシフトしているため、小売やメーカーがサプライチェーンネットワークを見直し、EC販売を軸に設計し直す動きが出ている。また、出来るだけリスクを分散したいという理由から、従来の一極集中の生産などから分散した生産体制へと移行する企業が増えた。
その中で、日本企業の様々な問題点もクローズアップされた。何より、サプライチェーンのデジタル化が進んでいなかったがために、情報が入ってこない。何が起こっているかを把握するだけでも時間がかかるから、意思決定の時機を失することが起きていた、と佐野氏。
「ポストコロナのサプライチェーン経営には、絶え間ない多面的な変化を早くに察知し、対処する能力が求められています。現状は、販売・製造・調達など部門ごとに情報管理をしているために、情報のサイロ化が起きており、全体を見通すことができない。また、月次の締め処理としてデータが収集されるから、リアルタイム性もない。それが意思決定の遅れを生んでいます」
また、物流というリソースは従来、潤沢にあり、「いつ頼んでもなんとかなるもの」だったが、現在はそのリソースもショートしている。そのため、物流事業者との情報連携ができていないことが、現場の課題・問題の見落としにつながるケースも多発しているという。