チャット接客でECでの購買率が向上し、リアル店舗への来客も増加
そして2つめの事例として、「ファミリア」の「ギフトコンシェルジュチャットセンター」の施策が紹介された。子供服の大きな需要として「ギフト」があるが、現在進行形で子育て中という人以外、なかなか商品を選ぶのは難しい。ファミリアでは、店舗にて販売員が直接話を聞きながらアドバイスを行うことで担保してきたが、同様の対応を非対面のオンライン上でも実現することが求められるようになった。
そこで、空色では店舗スタッフがオンライン上でも的確なアドバイスができるよう、ツールの提供だけでなく、対応手法についても支援を行った。それによって、通常のECサイトでの購入率が来訪者の1%程度と言われている中で、チャットツールでの接客を行った場合の購買率は25%以上と飛躍的に向上した。さらに接客を受けた人のうち40%が店舗に足を運んでおり、事前にチャット接客を受けた人ほど購入率が高かったという。「ただ足を運んだだけ」という人の購買率が5%程度といわれる中で、「チャット接客を受けた人」は35%と7倍程度向上した。さらに購入しなかった65%の人に対しても、帰宅後にデジタル上で「来店への感謝メッセージ」などをチャットで送ることもでき、リアルとオンラインのチャネル横断でコミュニケーションを取りつづけることができる。このように関係性を継続することで、その後の購買につながる可能性が高まると考えられる。
中嶋氏は「こうした仕組みが実現すれば、ECサイトだけでなく店舗や店舗スタッフとともに、非対面接客を通じて店舗およびブランドのファンを創出し、継続的に売上を増やしていくことができる」と述べ、「さらにセール品だけでなく定価商品や複数の商品を購入いただけるような価値の提供の仕方を顧客企業とともに考える。そして、今後ますますリアル店舗での販売が厳しくなる中で、優秀な販売員の流出を防ぐためにも、雇用の維持や働き方の多様化まで考えたとき、その意味でも非対面接客の充実は効果的であり、取り組むべき企業課題ではないか」と語った。