AIが導き出す最適解は、そのままでは受け入れられない
(1)人と機械がうまく協業できる妥協点を探る
最初の登壇者は、介護、医療、HR、金融、ロボットなど幅広い領域でAIを用いた社会課題解決に取り組むスタートアップ・エクサウィザーズのプロダクトマネジャー兼UXデザイナー西藤健司氏。2019年の入社以降、複数のAIプロダクトを手がけてきた。
その1つ「HR君 haichi」は、企業の戦略的な人員配置計画をAIが立案するプロダクト。人事担当者が大量の社員を動かし、パズルのように最適な人材配置を考え出すのにはとても時間がかかる。同じ部署の人同士を動かすことはできないし、異動先で同じ上司になってもいけないなど、考慮すべきルールも山ほどある。「HR君 haichi」はソフトウエアによりこうした業務時間を3分の1まで削減すると同時に、最適化のための技術としてAIを活用することで、できるだけ多くの人の希望が叶う提案をし、人事担当者をサポートする。
しかし、AIの出す解がどれだけ理にかなったものだったとしても、それが人間にとって常に最適なものであるとは限らない問題があると西藤氏は言う。
「プロトタイプ段階では、導き出された人材配置の最適解をそのまま人事担当者に提案しても、それは選べないという反応が返ってきて、受け入れてもらえなかった」
そこで「HR君 haichi」では、AI側の主張を押し付けるのではなく、あくまでヒントとして提示する立て付けにした。同様の問題は別のプロダクトでも起きたが、その際は「HR君haichi」のケースとは逆に、人が作った案をAIが評価することで後押しするやり方をとったという。
「現在はまだ、AIプロダクトへのオンボーディングの期間であり、人と技術がうまく協業できる妥協点を探る必要がある。おそらくは今後、どこかのタイミングで『AIの提案は必ずいいものだ』という理解が得られる時期は来るが、いまはまだそうはなっていないので、うまくすり合わせながらサービスを作っていく必要がある」