2021年の転職市場トップ10求人トレンド予測
1.製薬会社はMRとオンライン治験サービスのデジタル化を推進
新型コロナウイルスの流行により、病院、医薬情報担当者(MR)、治験などへの物理的なアクセスは限定されている。その結果、製薬会社がMRとオンライン治験サービス双方のデジタル化を求めるという傾向が顕著になっている。この目標に向かって、2021年には、治験に特化したリモートのMRとe-MRの雇用が急速に拡大すると予測。その一方で、腫瘍、希少疾患、CNS、眼科関連の治療など、高成長が見込まれる分野での研究開発や治験を一層重視するものと考えられる。
2.サイバーセキュリティ部門の需要が増加
2020年、日本では東京オリンピックで生じる恐れのあるサイバーセキュリティ攻撃やキャッシュレス決済に関連する被害報告が大きなニュースになった。こうした社会的不安を背景に、企業はハッキングやデータ漏洩などサイバーセキュリティに対する懸念を高めている。セールスエンジニアや、サイバーセキュリティのプリセールスコンサルタントへの需要が高まるものと見込まれている。
3.ビッグデータ関連の求人が活発化
2020年は、政府は個人情報保護法を改正するなど、データと企業によるその活用方法が国家レベルの重要課題になった。ビッグデータの重要性や顧客行動の分析への応用方法は2021年、最も重視されるトレンドの1つとなると予測。AIの導入によりビッグデータの評価の効率が増し、データアナリスト、データサイエンティスト、データエンジニア、NLP(自然言語処理)エンジニア、AIスペシャリストなど、各種業界関連の職務を担う人材への求人が活発化することが見込まれている。
4.コロナ禍の影響で、配送やeコマース分野は今後も成長の見込み
新型コロナウイルスが日本の労働慣行に及ぼした影響は明白で、幅広い分野で従業員が自宅で勤務するようになった。この移行に加えて、消費者が買い物をしたり品物を受け取ったりする方法も変化しており、配送や電子商取引の業界のサービスと製品にかかわる企業に有益な効果をもたらした。これらの傾向が予測どおり2021年にも継続すれば、今後12か月間に国内、海外いずれの市場でも、eコマースや配送関連の企業がさらに多く誕生すると予測できる。
5.クラウドのスペシャリストへの高い需要
従業員がオフィスからハイブリッド(テレワークと出社を組み合わせた働き方)な職場環境に移行するという変化を受けて、日本企業は効率性と生産性を引き続き維持しながら、ハイブリッドな働き方をどのように実現させるかという多くの課題に直面した。1つの解決策はクラウド型システムとオペレーションを利用すること。クラウドへの移行はあらゆる規模の企業にとって、2021年の優先すべき重要事項で、来年もこの部門の人材には多くの求人需要が見込まれる。
6.企業のデジタル化に伴い、IT関連の人材需要は増加
ハイブリッドな職場環境への移行に伴い、2021年も、デジタル化の重要性は高まるものとみられる。セキュリティエンジニア、ガバナンスエンジニア、PM(プロダクトマネージャー)、フルスタック開発者、クラウドサーバーエンジニア、ITサポートの求人を行う企業は契約ポジションとして在宅勤務の選択肢を提供している。
7.求められるハイスキルの会計士・財務管理者
会計事務所は、2021年を通じて、財務チームの人員拡大に比較的慎重になると予測されるが、FP&Aの領域のスペシャリストには需要が見込まれる。また、日本語と英語の両方が堪能で、海外の手続きや事情に精通し、独力で決算を行う能力があり、即戦力のある、経験を積んだ会計士及び、財務管理者には高い需要が予想される。
8.コンプライアンス部門で不足するバイリンガル人材
2020年には銀行・金融の両分野で「コンプライアンス」が明らかな合言葉でしたが、これは今後12か月間も継続すると見込まれる。市場には経験豊富なコンプライアンス関連の人材があふれているが、十分な資格を持つ人材、特にバイリンガルの人材が不足し、問題になっている。この人材不足の市場をさらに複雑にしているもう1つの問題は、この部門の専門性が高いために、スキルや経験の相互での移管が難しいこと。優秀な人材は、知識と経験のギャップに対応するための柔軟性が乏しい状態で、着任初日から業務を遂行できる能力が求められている。
9.半導体業界は大幅に回復へ
5Gが世界中で展開され、日本がその技術的進歩の最前線で市場をリードする中、半導体業界は多くの、とりわけアジアのテクノロジー企業にとって最大の関心事。新型コロナウイルスの影響により、半導体および半導体関連の装置・材料への需要が低下したものの、IoTやデジタル化の進展から生じる需要に伴い、2021年はこれらのテクノロジーに関連する需要が大幅に回復するものと予想される。
10.サプライチェーンと工場はコロナ以前のレベルに
サプライチェーン業界は、生産計画・管理、仕入れ、サプライチェーン計画といった機能に対して引き続き高い需要が見込まれる。その一方で、コロナ禍によって、物流センターにおける運搬の機械とシステムに対するニーズが劇的に高まったことで課題も生まれている。
ヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクター、リチャード・アードリー氏は次のように指摘している。
「多くの企業は、機能をデジタル化し、システムをクラウドへ移行させることで解決策を見出すことになるでしょう。コロナウイルス関連の問題のほかに、2020年の日本はビッグデータの利用とセキュリティにまつわる課題に取り組んできました。新たに就任した菅首相は現在、2021年初頭に予定されるデジタル庁という政府機関設立に向けた取り組みの先陣を切っており、企業の顧客データ利用を巡る人々の不安が軽減されることが期待されます。一方で、CPAが不足している会計の分野と、コンプライアンスの分野ではなおもバイリンガルの人材が不足しており、こうした人材の獲得はなおも課題となっています」