取引費用が高い「エンティティベース」の日本の組織
日置:日本の企業はグローバルに展開する場合でも「エンティティベース」、つまり、それぞれのエンティティ(法人)を一国一城的に扱い、個々に機能を整備して利益を追求させようとします。そうなると責任の所在が曖昧になったり、企業全体としてどう動かしたいのかが見えにくくなったりする弊害があります。対して欧米のグローバル企業は、エンティティの単位とは関係なく「グローバル全体でひとつの会社」とみなし、全体最適の視点でコーポレートやスタッフを配置していくという「ファンクションベース」の組織になっています。
入山:日本と欧米では企業体の捉え方そのものが異なっているという話は、とても示唆に富むものでした。そもそも組織のファンクションには、内部化したほうがいいものと外部化したほうがいいものがあり、経営学的には、「取引費用理論」と「エージェンシー理論」、加えて「RBV(リソース・ベースド・ビュー)」といった理論を考え合わせて判断することになります。たとえば取引費用理論では、一般に内部化すれば、市場で発生する取引費用を抑えられて柔軟性やスピードが上がるので、経営環境が変化するときは内部化したほうがいい。