日本企業の課題、経営にとって重要なことは変わらない
日置圭介氏(ボストン コンサルティング グループ パートナー&アソシエイト・ディレクター、以下敬称略):入山さんとは、6年ほど前に「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」のオンライン版で12回にわたる対談をさせていただきました。その頃から、入山さんの状況も随分変わったと思います。
入山章栄氏(早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授、以下敬称略):最大の違いは、たくさんの企業の社外取締役をやるようになって、実務者の視点でものを考えるようになったことですね。実際に意思決定する立場で結構ハードな経験もしまして、「どの会社も大変だな」ということを実体験から理解できるようになりました。
日置:入山さんの学者の視点に経営者の視点も加わったことでニューコンビネーション(新結合)が起き、新しい発見や理論が生まれているのではと期待しています。過去の対談を読み返すといろいろなキーワードが出てきて、かなり網羅的ですよね。今回は当時の対談を振り返りつつ、現在の日本企業の課題について考えていきたいと思います。
入山:わかりました。
日置:入山さんは、あれから日本の経営の課題が変化していると感じますか。
入山:あまり変わっていないと思っています。経営の大事なところは5年や10年で変わるものではないでしょう。最近はDXが流行っているとかSDGs/ESG投資が重要になっているとか、コロナ禍での経営などのトピックはあります。そういう現象を前に、今でもあの対談は貴重なものだったと思います。
日置:僕も、いろいろな企業と話すなかで、表向きはともかく、なかなか変わりきれない企業が多いと感じています。
過去の対談では「変身のための経営」をテーマにお話した回[1]がありました。覚悟を持ってダイナミックかつスピーディに変わることができているのは創業一族が経営するオーナー系企業が多い、または外部から迎えた優秀な経営者を創業家が「後ろ盾」となって支えるケースも出てきている、という話をしましたね。
入山:ファミリー企業は長期的視点で経営を考えられるし、トップに胆力があるから変えていけることが多い。僕が社外取締役を受けるのはファミリービジネスの企業が多いです。
[1]:【グローバル経営現論】「変身」のための経営を創る | Special Report [PR]|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー