「デジタル化した社会」を、アートシンキングとデザインシンキングで構想する
増村:実際にWSを開催されてからのお話を聞かせてください。今回については、どのような方が受講されたのですか。
古澤:公共・社会基盤分野のメンバー、加えて金融分野など複数の事業部に声を掛けて、企画や新規事業の担当者など比較的クリエイティブな業務を担当している人たちを集めました。WSだけでなく、最終的にはアウトプットを前提にしていたので、その領域に興味がある、または仕事として取り組もうとしている人たちに限定しました。13人という少人数で、面白がってくれていましたが、戸惑ってもいましたね。
福田:IT業界は日進月歩で、新しい技術へのキャッチアップは日常業務でも行っているので、知的好奇心は比較的強い方でしょう。その意味で、新しいことにチャレンジすることに対してはハードルが低かったとは思います。
増村:好奇心半分、疑い半分というところでしょうか(笑)。でも、皆さん生き生きと取り組まれていましたよね。終了後の手応えはいかがでしたか。
古澤:まず増村さんに実施いただいたオンライン上で自分の手をデッサンするワークショップで、絵の描き方の基礎を体験できたとことで大きな示唆が得られたと思います。
その上で、“将来像”を言語化するワークショップに時間をしっかりとって、さらにそれをドローイングとして絵で表現するという流れもよかったですね。その際に他の人やアーティストの方が側で同じテーマで描かれていたことで、それまで自分になかった捉え方を目の当たりにして大いに触発されました。
その後、「デジタル化した社会がどうあるべきか」という具体的な将来像を、内省と表現を繰り返しながらビジョンとしてまとめました。
後半はデザインシンキングの要素を取り入れていきました。2030年の人々のペルソナとか、その人たちがどんな技術でどんなサービスを利用しているのかなど、より具体的に発想していきましたが、前段でアートシンキングでのインプットがあったおかげでかなり広がりが持てたように感じます。
福田:アートシンキングとデザインシンキングって地続きであると感じました。ですから、このセットにしたプログラムを組ませてもらいました。
増村:アートシンキングで、個人の欲求ややりたいことを文字だけでなくてビジュアルで可視化して課題としての問いを明確化することで、次にデザイン思考で行う課題解決についても自分ごと化できる。それがアートシンキングとデザインシンキングのそれぞれの役割のように思います。
古澤:事後のアンケートの回答を少し紹介すると、8割は満足度として高く評価してもらえましたが、「アートと事業の関連が理解できない」という意見もありました。また、新しい価値を生み出す思考法として7割が「役立つ」と評価しましたが、いざビジネスに活用するとなるとまだ課題も多いという指摘もありました。
福田:アートシンキングさえやれば、万事うまくいくわけではないですからね。実際のビジネスに落とし込むまでは、デザインシンキングなど他のスキルや考え方と組み合わせる必要があるでしょう。多彩な見方やスキルを得ることが大切で、そのひとつとしてアートシンキングへの期待感は確実に得られたと思います。
増村:大変参考になりました。本日はありがとうございました。