2007年から続く花王のデジタル環境整備
ゲーム業界出身で、1997年に花王にキャリア入社した田中氏は、DXという言葉が生まれるはるか前から、花王のデジタル改革を推進してきた。今回取り上げるWeb製品カタログのリニューアルプロジェクトも、その延長上にある。
CMSを活用したWeb製品カタログ環境を構築
今回のWeb製品カタログサイトのリニューアルは2007年以来、実に14年ぶりのリニューアルだったが、田中氏は前回のリニューアルも主導している。
2007年のプロジェクトでは、まず同サイトのデータベースを構築。そこからCMSのテンプレートを使って、ワンソースマルチユースで製品ページを生成するシステムを作った。
数多くの製品を抱え、色違い、詰め替えなども含めると数千の製品ページを作成する必要があった。そのすべてを手作業でやっていては追いつかないし、コスト面でも見合わないことから、システム化の話が持ち上がった。
「システムの構築自体も大変だったが、当初構築したシステムでは実際に運用する際の業務フローまで考え抜けていなかった。定期的に更新する社内業務フローをどう決めるかというところで苦労した」
全動画をYouTube化、Webサーバをすべてクラウド化
その後、このCMSはアジアにも展開。定着しつつあった2011年に、今度は自社サーバを廃止し、YouTubeを動画配信基盤にするプロジェクトを主導した。
YouTubeへの移築を終えた翌年には、Webサーバ、WCMサーバをすべてAWSに切り替えるプロジェクトを推進。
「こちらも当時はクラウドに対する懐疑的な見方が強かったが、データセンターと比較した際の安全性やコスト比較を丁寧に説明して乗り切った」
Web環境のグローバル統合
2014年からは、CMSをアドビシステムズ提供のAdobe Experience Manager(AEM)に置き換えるプロジェクトに着手。同時に、欧米との環境統合も進めた。
「Webサイトの制作方法の根本的な変更を目的としたため、特定多数の社外パートナーへの説明が必要だった。欧米展開も初めてだったことから、コミュニケーションにも苦労したが、5年経った今でもグローバル基盤として定着しており、基本的にはうまくいったものだと思っている」
このように順を追ってデジタル環境を整えてきた先に、今回取り上げるWeb製品カタログサイトのリニューアルプロジェクトがある。