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クリエイティビティを刺激する「脳の部位」を活性化させるスイッチとは

特別鼎談:チクセントミハイ博士×入山章栄氏×佐宗邦威氏 前編

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 入山章栄氏と佐宗邦威氏がイノベーションとクリエイティビティを包括的にとらえようとする本連載。今回は特別ゲストとして、ポジティヴ心理学の世界的な第一人者であり、フロー概念を提唱したことでも知られる、米クレアモント大学のミハイ・チクセントミハイ教授を迎え、イノベーション、クリエイティブな都市、創造性とテクノロジー、人の幸福度などに関して鼎談を行った。今回は前編として、クリエイティビティとイノベーション、クリエイティブな都市に関しての議論の内容をお届けする。今までの連載はこちら。

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チクセントミハイ博士の「クリエイティビティのシステムモデル」

入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
 いま、日本では「クリエイティビティとイノベーション」が大きな課題となっており、多くの人々が「私たちはどうしたらもっとクリエイティブになれるのか」と議論しています。しかし、その議論は様々なレイヤーで分断的に行われ、異なる専門領域、専門用語が使われており、議論が深まっていないのではないか――。

 私たちはその仮説を図1「Innovation Key MAP」のように体系化して、様々なレイヤーでの議論における共通の特徴・違いを見出すことから関係性を捉え、果ては全体像を掴みたいと考えています。そして、日本にとっての「大きな示唆」を得たいと思っているんです。

本連載で考える「Innovation Keyword MAP」図1:本連載で考える「Innovation Keyword MAP」
©Junko Shimizu

チクセントミハイ:
 それはビッグチャレンジですね(笑)。でも、とても意味のあることだと思いますよ。

入山:
 ありがとうございます。そこで、ぜひとも博士とお話ができればと思っていたのです。近年、博士は「フロー (注1)がクリエイティビティのための1条件である」と示唆されていますね。そして神経科学者によって実際に実証されている。つまり、クリエイティビティにおける心理学と神経科学の課題には、密接な相関があるということです。そして著書では、それ以外の分野やレイヤーにも言及されていて、まさに「全体像を捉えている」のではないかと。

チクセントミハイ:
 なるほど。まずは私が使っている「クリエイティビティのシステムモデル」(図2)をご存知ですか。確かにお二人が指摘するように、クリエイティビティは単に個人やその心理、モチベーションや性格などを見るだけでは全体像を捉えているとはいえません。私は、「文化」「個人」「社会」という三要素間のシステムとして創造性を考えています。

クリエイティビティのシステムモデル図2:クリエイティビティのシステムモデル
チクセントミハイ博士のSlideshare
Csikszentmihalyi and the Systems Perspective for the Study of Creativity」(slide No.6)をもとに作図

 まず、文化は「複数のドメイン(図2のBからFなどに宗教や言語などのいくつかの要素)」によって成り立っているもので、その文化から個人に「遺伝や環境」といった情報が伝達され、個人は文化の影響を受けることになります。

 しかし、個人のアイデアは直接、文化には反映されません。そこには新しいアイデアの良し悪しを判定し、「文化」に反映すべきかを決定する「ゲートキーパー」、つまりは“目利き機能としての社会”を通過する必要があります。文化、個人、社会という三要素がうまく回っている時、クリエイティビティやイノベーションが生まれ、活性化するというわけです。

佐宗(米デザインスクールの留学記ブログ「D school留学記~デザインとビジネスの交差点」著者):
 そう、私たちもこのモデルにはとても共感を覚えており、まさにその三者の相互作用が重要な鍵を握ることを実感しています。ところが、個人の心理や性格などについて理解しようとする人は、それ以外の部分については見ていないことも多いんですよね。

チクセントミハイ:
 「よし!個人の創造性についてはきちんと理解した。社会、文化は別の機会にしよう」という感じですね(笑)。


ミハイ・チクセントミハイ 教授

1934年ハンガリーで生まれる。1956年にアメリカに渡り、1970年よりシカゴ大学心理学科教授、教育学教授を経て1990年よりクレアモント大学院大学教授、クオリティ・オブ・ライフ・リサーチセンター長を務める。「フロー理論」の提唱者として知られており、創造性や幸福に関する研究を行っている。


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