データ分析企画では期待値を整え、具体化を促す
前回、本研修ではデータ分析活動のPDCAのうち、PlanとCheckとActionに力点を置いていると紹介しました。その中でデータ分析プロジェクトの企画はPlanに当たります。具体的には「自身の業務および事業上の目標を達成する上での重要な課題を発見・設定し、データ分析官とどのようにデータを利活用していきたいのか議論した上で、分析プロジェクトそのものの企画を行う」ことです。
我々自身は、このPlanのフェーズを最も重視していました。それには2つの理由があります。
1つ目の理由は、初期の企画のクオリティがデータ分析プロジェクトの成否を大きく左右すると考えていたからです。前回、研修1週目における「開始時点から迷走しやすいデータ分析活動」という失敗パターンを紹介しました。我々自身の経験を振り返っても、開始時点で「これはちょっとこのまま進めるとよくないかもしれない」と認知できていたものは、多くのケースでその予見が残念ながら当たってしまっていました。そこで、着手時点で我々が感じる“まずさ”を言語化して計画書のフォーマットに落とし込めば、皆さんが気づきやすくなるはずだと考えたのです。
後工程での修正は多くの手戻りも発生させますし、過去の自らの行動を否定してでも最初からやり直す判断が適切に行われない可能性すらあります。データ分析に限らず、初期値としての企画の良し悪しはプロジェクトのROIを大きく左右します。
2つ目の理由は、企画フェーズは受講者の皆さんに受講目的そのものを改めて「自分事」として考えていただく良いきっかけになると考えたからです。
参加してくださっていた皆さんは全員“手上げ”での参加です。業務上使いたいと思っておられる方もいれば、自己啓発で参加されている方もいて、どちらも歓迎していました。皆さんに共通していたのは「データを使えば何か役に立つかもしれない」という期待感であったかと思います。
ただ当然ながらその期待感は千差万別で、具体的になっている方も、漠然としたイメージしかもっていない方もいたのではないかと思います。Planはデータ分析の経験があってもなくても、実際にデータを活用した問題解決を始めようが始めまいが、今自分自身の周りにある業務課題を振り返るきっかけとなります。
Planフェーズで企画を具体的に検討することは、さまざまな期待感を具体化することにつながります。期待感を、具体的な自らの学習ニーズと業務課題に翻訳し直せば、行動に落ちやすい形となりますし、その後に受講する内容についても自らの課題に紐づけて学習することができやすくなります。Planは思いを行動に変えていく、未来に向けた大きな一歩目となるのです。
データ分析企画の適切な準備がなければ失敗に終わる
それでは、実際の講義内容を紹介していきます。講義で最初に話したのは「データ分析開始前の準備の重要性」についてです。
繰り返しになりますが、ビジネスにおけるデータ分析はあくまで「手段」。データ分析の結果はビジネス上の課題解決に寄与、あるいはビジネス価値の創出につながる必要があります。事業活動においてはさまざまなプロジェクトが存在していますが、それらが全てビジネス上の課題解決と利益創出を目的にしていることと、全く同じで何ら違いはありません。
ただし、データ分析やデータ利活用といった枕詞がつくプロジェクトには、前回も一部ご紹介しましたが、陥りやすい状況があります。いくつか例を挙げると、下記のようなものです。
- 特徴量や前処理、アルゴリズムの変更などによる機械学習モデルの精度改善や、さまざまな角度からのデータ探索それ自体が目的化してしまい、本来の事業課題解決・利益創出につながらない活動に様変わりしてしまう。
- 分析結果を使う段階になって業務システムや設備との連携が必要と判明し、コスト不足となり、プロジェクト中断となる。
- 業務部門側のタスク洗い出しと体制準備が不十分で、検証段階になって「現場は忙しくてできない」「そのような業務オペレーション変更はできない」となる。
筋の良いインパクトの大きいテーマを選定し、参画メンバーの皆さんが高いモチベーションをもっているのに、開始時点の全体方針設定や進め方の拙さで停滞や中断をするのは、非常にもったいないことです。プロジェクトではさまざまなことが起きますが、適切な準備=企画をして、実現可能性があるプロジェクトは確実に成果につなげていくようにしましょう。
ではどうすれば適切な準備ができるのでしょうか。そのためのシートを用意しました。準備時に検討が必要な項目をまとめた「データ利活用テーマシート」です。次のページで紹介します。