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ヤマハ発動機流データ分析の民主化

創業者が再度起業したらどんな事業をつくるのか──DXと新規事業で描く、ヤマハ発動機のものづくりの未来

特別編ゲスト:ヤマハ発動機株式会社 青田元氏、大西圭一氏

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 本連載ではヤマハ発動機IT本部デジタル戦略部大西圭一氏が「現場目線のデータ分析の民主化」をテーマに同社の取り組みをコラム形式で紹介してきた。今回は、「経営的な位置づけにおけるDXと新規事業」までテーマを広げる。新規事業、DXは同社の経営においてどのように位置付けられ、それぞれどのような体制で進められているのか。大西氏と、同社技術・研究本部NV・技術戦略統括部 統括部長・青田元氏への編集部インタビューをお届けする。議論は最終的には、創業者が再度今の時代で起業したらどのような事業をつくるのかという、企業の存在意義を議論する展開へ。

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リーマン・ショックの影響を受け、自社の課題に真摯に向き合った10年間

──ヤマハ発動機において「新規事業」と「DX」は、経営文脈の中ではどのような位置づけにありますか。

青田 元氏(ヤマハ発動機株式会社 技術・研究本部NV・技術戦略統括部 統括部長):まずは、新規事業とDXの当社における位置づけを語る前に、私からリーマン・ショック以降の当社の経営状況を振り返りたいと思います。

 2008年9月にアメリカの有力投資銀行であるリーマンブラザーズが経営破綻したことを発端にした「リーマン・ショック」は、世界的に多くの企業の業績に影響を与えました。2009〜11年は、ヤマハ発動機にとってもすごく辛い時期になりました。僕らはものづくりの会社であり、さらには趣味材の会社。景気が悪くなり、お客様の可処分所得が大きく減少すれば、真っ先に商品を買ってもらえなくなる立場にあります。ですから、本来は景気の“先眺め”が非常に重要になるのですが、当時の僕らは景気の後退を予測できていませんでした。

 景気後退を察知したら即座に生産を調整する必要がありますが、その“ブレーキ”も備えていなかった。実際に商品が売れなくなってもサプライチェーンは動き続けました。商品は作ってしまえば、その後は市場に並べるしかない。とはいえ、当社の商品はどれもサイズの大きなものばかりだから、いつまでも店頭に置いてはおけません。どうにかして売らなければならないとなると、最終的には値引きする以外にない……そういう負のスパイラルに陥っていました。自社の事業構造に改めて気づかされました。

 結果的に、僕らは代償としてかなりの額の利益準備金を損失の補填として取り崩すことになり、中期経営計画で描いていた絵は大幅に下方修正しました。開発中だったものの多くを中止し、ミニマムな経営体制に戻した上で回復のシナリオを描く以外にありませんでした。そうやってどうにかバランスシートを元の水準に戻すべく我慢してきたのが、2018年までの10年間です。

 また、社内では「デマンドチェーン・イノベーション」と呼んでいますが、完璧ではないにしろ、需要変動に合わせた生産体制を築くことにも努力してきました。こうした我慢の時期を経てなんとかリーマン・ショック前の経営水準まで回復し、ようやく成長に舵を切ったのが、2019~21年の直近3年間ということになります。

 ですから、それからは成長戦略投資を使うし、成長戦略経費も使う。既存事業も伸ばしていく一方で、新規事業のタネも作っていく。その中ではやはりDXが大きな課題になります。ここ数年は、デジタルに強い人材を外から招聘し、組織にデジタルの横串を通していくことに取り組んできた、というわけです。

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