日本と米国のスタートアップエコシステムとの架け橋に
蛯原健氏(以下、蛯原):まずは、中村さんのVCとしてのキャリアのスタートからお聞きできればと思います。
中村幸一郎氏(以下、中村):新卒で三菱商事に入社後、通信キャリアや投資事業を担当しました。キャリアの転機は、シカゴ大学へのMBA留学であり、ベンチャーファイナンスの大家であるスティーブ・カプラン(Steven Neil Kaplan)教授に師事したことです。
MBA卒業が近づいた頃に、カプラン教授から卒業後の進路を問われました。当時、カプラン教授は⽶国のベンチャー・キャピタリスト育成機関であるカウフマン・フェローズのプログラム(Kauffman Fellows Program:KFP)のアカデミア分野の責任者になることが内定しており、教授に推薦いただき参加することになりました。
蛯原:KFPでは、どのようなことがありましたか。
中村:次世代VCのリーダーの育成が主な目的の機関でしたので「最新のケーススタディ」や「知識」も学ぶのですが、業界ネットワークを拡大することも重要な意義となっています。個人的にはそれ以上に貴重な出会いがありました。Sozo Ventures を一緒に経営する共同創業者のフィル・ウィックハム(Phil Wickham)は当時KFPの代表で、彼とはここで出会いました。
蛯原:Sozo Venturesに関しても、聞かせてください。
中村:Sozo Venturesは、「シリコンバレーの日米ハイブリッドVC」などと呼ばれることがあります。米国でスタートアップへの投資を行うのですが、日本の機関投資家や大企業などへのLP参加を呼びかけ、また、米国の投資先スタートアップの日本進出支援も行います。
投資実績としては、ツイッターやスクエア、パランティア・テクノロジーズ、コインベースやズーム・ビデオ・コミュニケーションズなどがあります。
米国と日本との架け橋という意味では、SOMPOホールディングスによるパランティア・テクノロジーズへの投資や合弁会社設立、三菱UFJ銀行によるコインベースへの投資などがあります。日本市場への米国スタートアップの進出支援ではツイッターとズーム・ビデオ・コミュニケーションズに携わっています。
蛯原:今回は中村さんと私の日本一時帰国滞在がたまたま同時期になったこともあり、対面でお話をさせていただく機会ができたのですが、日本で多くの方と話す機会があったと思います。特に印象深いことは何かありましたか。
中村:グローバルで常識とされているスタートアップ投資の常識が日本ではあまり知られていない。これはSozo Ventures が監修した『ベンチャー・キャピタリスト──世界を動かす最強の「キングメーカー」たち』を出版する動機にもなりました。今回、日本に滞在している間にも多くの方と議論をしましたが、まだまだ米国と日本の架け橋として、多くの活動をしないといけないと改めて思いました。