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馬田氏と語る、社会の変え方のイノベーション──未来の理想を道筋とともに提示する「4つの方法」とは?

ゲスト:東京大学産学協創推進本部 FoundX 馬田隆明氏

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 独立系ベンチャーキャピタル代表で『テクノロジー思考』の著者・蛯原健氏による対談シリーズ。今回は前編に続き、東京大学産学協創推進本部でスタートアップ支援を行う馬田隆明氏をゲストに迎えてお送りする。同氏は最新著『未来を実装する』で、成功する社会実装のポイントとして「インパクト」「リスク」「ガバナンス」「センスメイキング」の4点を挙げている。対談後編となる今回は4つのポイントそれぞれについて伺うとともに、企業組織それ自体を1つの社会と見立てて、新しい技術の社内への実装、すなわちDX文脈での応用の可能性にまで触れてもらった。

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社会的インパクトから考えるための「ロジックモデル」

蛯原健氏(リブライトパートナーズ 代表取締役、以下 敬称略):前編では馬田さんが『未来を実装する』を執筆された経緯として、なぜ社会実装や社会的インパクトに注目されているのかをお聞きしました。この後は、社会実装の4つのプロセスに関してお聞きしたいと思います。主要メッセージとして「インパクトからはじめよ」と述べられていますね。

タイトル図1:四つの原則と一つの前提(図版出典:[1]

馬田隆明氏(東京大学産学協創推進本部 FoundX および本郷テックガレージ ディレクター):成熟社会においては大きな課題は概ね解決されており、顕在化している課題には、その解決が社会的インパクトを与えるようなものが多くはありません。また、潜在的な課題もなかなか見つからない。では、新しいデマンドにつながる課題をどう発見するのか。

 それは、より良い理想を提示することではないかと考えました。より良い理想としてのインパクトを提示し、現状とのギャップを課題として新たに提起する。すでに顕在化している問題をいかに発見するかというアプローチとは違って、「こうなっていくべきですよね」ということを示していく。これまで社会起業家と呼ばれる人たちが採用していたアプローチに近いことが、多くのビジネスシーンで必要になっていると思います。

 この本では、問題提起のツールとして、ソーシャルセクターやパブリックセクターでよく使われている「ロジックモデル」を紹介しています。ロジックモデルとは、そもそも自分たちはなぜこの活動をやっているのかということを、インパクトとアクティビティ、その間にあるアウトプット(結果、実装)、アウトカム(成果)として整理し、セクター間のコミュニケーションで活用するものです。これを民間企業で用いれば、さまざまなセクターと協調してやっていけるのではないかというのが、インパクトの項でお伝えしたい、大まかなところです。

タイトル図2:ロジックモデル(図版出典[2]

蛯原:確かに、理想がなければ課題もない。ですが、そもそも起業家の仕事自体が理想を描くことだという意見もあります。

馬田:初期のスタートアップでは、そこまで理想を描けているケースばかりではない気がします。最初からあったほうがもちろんいいですが、やっていくうちに徐々に自分たちの事業の意味や社会的な影響度の大きさが見えてくる人も多いのではないかと思っています。蛯原さんはどう思われますか。

蛯原:「起業したいだけの起業家はダメだ」と言う人もいますが、私は“それでもいい派”です。ただ、さすがに自分たちが社会に認知されるくらいまでには、天命を見つけているようでなくてはと思っています。それが見つけられない人が社会との間で摩擦を起こすということなのかなとも思います。

馬田:必ずしも最初から持っていなくてもいい、というのは同感です。ただ、きちんとしたビジョンを持ったほうがいいという風潮や社会を作っていくことは大事ですよね。良いビジョンを持っているところほど良い人材が集まるなどの好循環を作っていくことで、結果としてそう考える起業家が増えていくプロセスがうまく回るといいなと思っています。


[1]:図版出典:馬田隆明・著『未来を実装する――テクノロジーで社会を変革する4つの原則』(英治出版)p126、図3.1「四つの原則と一つの前提」参照

[2]:図版出典:馬田隆明・著『未来を実装する――テクノロジーで社会を変革する4つの原則』(英治出版)p151、図4.2「ロジックモデル」参照

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