創造力を“民主化”する、3つの思考法
この連載でお伝えしていく思考法の全体像について説明したい。創造的に考えるための“本質的に重要な思考法”は3つある。「統合思考」「アナロジー思考」「転換思考」である。流行りの〇〇思考法などに踊らされずに、この3つの思考法をじっくりとマスターし、それぞれをパズルのように組み合わせて考えることができれば、間違いなく創造的に考えることができるのだ。
本連載では最初の2回で統合思考を扱い、その後、アナロジー思考、転換思考、そしてまとめという構成で進めていく予定だ。各回の最後にはケース問題も用意するので、ぜひ挑戦してみてほしい。それでは、統合思考について話を進めよう。
統合思考とは何か
統合思考とはトレードオフの課題をはじめ、さまざまな課題を同時に解決しようとする考え方だ。海外では、インテグレーティブ・シンキングや、AND思考などと呼ばれる。
図の「統合思考①」のように、さまざまな課題を一気に解決する方法を一般的には統合思考と呼ぶ。しかし、さまざまな課題の中でも、特にトレードオフの課題を見極めてこれを統合して解決する方法が極めて有効なことが多いことから、図の「統合思考②」のパターンも含めて統合思考という場合もある。今回は、統合思考①のパターンを解説し、次回は統合思考②のパターンを解説する。
「従来の課題解決手法」と「創造的な課題解決手法」の違い
創造的な問題解決をする場合、最も重要な点は「課題やニーズを統合する」ということだ。
従来型の課題発見プロセスは、個別の課題を「なぜそうなのか」「具体的なボトルネックは何なのか」と細かく分解して課題を特定する。しかし、ここでお伝えしていく課題を特定する方法はその逆になる。
すなわち、「この課題だけでなくもっと他の課題も一気に解決できる包括的な課題は何か」と上位概念に向かって思考を進める。個別の課題を細く分解するのではなく、むしろ周辺の課題を包括してより大きな課題を目指すのだ。
この感覚を具体的に掴むためには、デザイン思考で磨かれたニーズや課題の捉え方が極めて参考になるので、次に紹介したい。