日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、「経営層スタディ・シリーズ:CFOスタディ 2021」の日本語版(第21版)を公開した。この調査は、日本の80名を含む、世界43の国や地域で28業界におよぶ2,000名の最高財務責任者(CFO)を対象に、定量調査と18年以上にわたるデータの詳細分析、定性的な直接インタビューを実施した最新のもの。
同調査によると、調査対象企業において、CFOが率いる経理財務部門は、従来の経理財務業務に加え、企業戦略の策定と実行において企業価値の向上に資する意思決定の支援がCEOから強く求められていることが明らかになった。しかし実際は、従来の経理財務業務に割く時間が多く、CFOが意思決定支援に費やす時間は全体の25%、分析とアクションに至っては、全体の10%未満だった。CFOは、高度なアナリティクスにより変化を機敏に捉えた予測を行い、トランスフォーメーションの当事者を支援する変革の推進者として、最良の経営判断に導くことが求められているという。
調査の主なポイントは以下のとおり。
- 日本のCFOは世界のCFO同様、企業戦略の策定と実行において自社の経理財務部門が有効に機能していると回答した割合は半数未満(CFOスタディを実施している18年間で一貫した傾向)
- 日本のCFOの59%が、効率の改善を今後2~3年の自社の最優先課題として回答(世界のCFOにおける割合は56%)
- 日本と世界のCFOはともに、意思決定には高度なアナリティクスとAIが重要であると認識(「収益性/利益率分析」に高度なアナリティクスを利用している割合:日本56%/世界53%、AIを利用している割合:日本65%/世界53%)
不確実な経営環境下でCFOの役割が一段と重要度を増しているなかで、企業活動、データ集積、分析などの効率改善が課題となっているという。
意思決定支援の方法(効率性、スピード、実行力、正確性)に基づき経理財務部門を「戦略的アドバイザー」「慎重な決定者」「アクション設計者」「限定的関与者」の4つのタイプに類型化した結果、日本のCFOにおける戦略的アドバイザーの割合は21%(世界のCFOにおける割合は15%)だった。
この調査結果をもとに同社は、企業のCFOが戦略的アドバイザーとして意思決定支援をするため、「戦略に注力し、意思決定を支援すること」「経理財務部門のアジャイル化を進めること」「データを企業文化の中心に据えること」「人財に投資すること」「テクノロジーを活用し、インテリジェンスを強化すること」の5つの行動指標を推奨するという。これらの指標に対する自社の成熟度を踏まえ、変革の構想を策定して業務・組織・システムが一体となった将来像と、それに向けた実行計画を社内で合意形成し、経理財務部門含めて全社に展開していくことが重要である。CFOはその実行により、「変革の推進者」として、この激動時代の企業経営に大きな役割を果たしていくことが期待されているとしている。