米シカゴの総合不動産サービスであるジョーンズ ラング ラサール(以下、JLL)は、アジア太平洋地域のESG戦略と、データセンター市場の動向および今後の方向性について調査、分析したレポート「データセンターの未来をつくるESGへの挑戦」を発刊した。
同レポートは、アジア太平洋地域における13ヵ国のデータセンター管理者505名(一般企業70%、データセンターサービス事業者30%)を対象に実施した調査をまとめたもの。
調査によれば、アジア太平洋地域のデータセンター管理者のうち85%が、「サステナビリティは業務や意思決定に大きな影響を与え、データセンター市場の成長は、よりESG対応に影響を受ける」と考えていると回答した。
デジタルコミュニケーションツールやEコマースの普及に伴い、世界中のデータを保存、処理するコンピュータシステムやサーバーを収容するデータセンターの需要が増加している。これに伴い、データセンターで使用されるエネルギー量は4年ごとに倍増しており、現在データセンターは、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の最大4%を占めているという。
しかし、「エネルギー使用状況を可視化し、事業価値を向上、効率を最大化し、廃棄物の削減を実現している」と回答したデータセンター事業者は28%にとどまったとしている。
また、同レポートによると、データセンター戦略における今後2年間の最優先事項は、サステナビリティと社会的責任の追求で、従来の生産性や効率性よりも優先項目となっている。ネット・ゼロカーボンの達成に向け、データセンター事業者と管理者は、電力消費を削減し、廃棄物を抑えるテクノロジーに注目し、電力の再生可能エネルギーへのシフトが予測されるという。
同調査では、データセンター管理者の約50%が、2023年までにAI支援と自動化による冷却制御設計を採用する計画だと回答。また、将来的に気候変動に対する中立性、すなわちカーボンニュートラルを達成するためには、データセンターの建設を見直すことが重要であり、特に鉄やコンクリートといった炭素を多く含む材料を最小限に抑えることが重要であると回答している。
加えてデータセンター事業者は、投資家からの信頼を獲得し、株主の価値を生み、リターンの最大化につながる明確なKPI(重要業績評価指標)を設定することが必要だとしている。