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移動データとモビリティDXの最前線

DeNAが水平分業型のEVプラットフォームで目指す自動車産業の“変革”とは

第10回 ゲスト:DeNA 二見徹氏、左向貴代氏

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従来の自動車産業とモビリティサービスの違い

石野真吾氏(以下、敬称略):お二人とも日産自動車からDeNAに移ったという経歴をお持ちですが、まずはこれまでのキャリアについて簡単に教えていただけますか。

二見徹氏(以下、敬称略):私は1981年に日産自動車に入社して、以降38年間勤務してきました。ご存知のように現在自動車産業は激変期にあり、特にクラウド、つまりインターネットと車を融合させる部分が非常に重要になっています。元々カーエレクトロニクスが専門だったことから、縁あってDeNAのお手伝いをするようになり、後にフェローとしてDeNAに加わることになりました。

左向貴代氏(以下、敬称略):私は元々旅行業界にいまして、自動車業界へ移ったのが2004年でした。「カーウイングス」という、テレマティクスサービス事業に参加することになり、主に技術広報を担当しました。二見が当時から通信分野に重点を置いた企画に積極的だったこともあり、自然と私の担当領域も少しずつ変化し、今の立場に落ち着いた経緯があります。

石野:ありがとうございます。そんなお二人は、既存の自動車業界の現状をどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。

左向:前提として、自動車メーカーのビジネスは7割が乗用車で、商用車にあまりリソースを割かない傾向があります。ただ、自動車業界の外には、DeNAのように商用車に舵を振り切って事業を展開する企業が少なくありません。市場に出た後の車への技術活用は、自動車メーカーにとっては非常に困難ですが、IT企業はそれをいとも簡単にやれてしまうわけです。

石野:日産自動車からDeNAに移ったことで、お二人の関心も商用車に向いたということですね。

左向:私たちはどちらも、車両設計やエンジン開発など自動車産業の本流にいた人間ではないので、この業界の中では少し変わった視点を持っているのかもしれません。ただ、販売台数の推移や走行距離といった外部データを見れば、商用車に着目したのは必然だったと言えると思います。

 従来の自動車産業と、カーシェアリングやタクシー配車システムなど新たなモビリティサービスとでは、KPIに対する考え方が大きく異なります。モビリティサービスのKPIは「稼働率」で、需供のマッチングやライフタイムバリューの向上を目指すことになります。それに対して自動車メーカーが重視しているのは「所有率」です。つまり自社の製品の魅力をいかに上げていくかが重要で、KPIは販売台数ということになります。そのため、自動車メーカーがモビリティサービスに取り組むには、自分たちの事業KPIを根本から見直さなければならなくなります。

モビリティサービスにおける“Connected” “Service”の役割
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石野:だからこそ、こうした外部企業がモビリティサービスに乗り出す意味があるわけですね。

左向:そうですね。そこで最も重要なのは、自動車業界の産業構造を“垂直統合型”から“水平分業型”に移行することです。たとえば、我々は現在EVに特化したデータ基盤の構築に取り組んでいますが、これを特定の自動車メーカーだけでなく、マルチブランドとして運用できるようにしなければなりません。

モビリティサービスの基本構造–デジタルプラットフォーム
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二見:自動車業界は、国が道路などのインフラをおよそ130年かけて造り上げてきた中で、“車”というハードウェアをできるだけ安く製造して高い価値を付けて売ることに特化してきました。そのため、自動車メーカーがモビリティサービスを展開しようとすると、どうしても各社が自社ブランドでやろうとしてしまい、水平分業に頭を切り替えることができません。データを取得するための車両もデータを活用するサービスも多ければ多いほど大きな価値を生むモビリティサービスは、データを収集・加工して連携できるようにするプラットフォームが中心を担うもので、他のジャンルでプラットフォーム事業を得意としてきたDeNAがそこを担おうとしているわけです。

モビリティサービス~典型的な水平分業型事業
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この記事の著者

友清 哲(トモキヨ サトシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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