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「イノベーターシップ」による事業創造

21世紀のイノベーターは、「スーパージェネラリスト」をめざす

第6回:多摩大学大学院 教授 田坂 広志 氏

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スーパージェネラリストが身につける「7つのレベルの思考」を「垂直統合する知性」

田坂 広志多摩大学大学院 田坂 広志 教授
1951年生まれ。1974年東京大学卒業。1981年同大学院修了。工学博士(原子力工学)。1987年米国シンクタンク・バテル記念研究所客員研究員。1990年日本総合研究所の設立に参画。取締役等を歴任。2000年多摩大学大学院の教授に就任。同年シンクタンク・ソフィアバンクを設立。代表に就任。2003年社会起業家フォーラムを設立。代表に就任。2008年世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Agenda Councilのメンバーに就任。2010年世界賢人会議ブダペスト・クラブの日本代表に就任。2011年東日本大震災に伴い内閣官房参与に就任。2013年「スーパージェネラリストの7つの知性」を学ぶ場「田坂塾」を開塾。

――では、「7つのレベルの知性」は、どのようにすれば、磨いていくことができるのでしょうか?

田坂:
 では、それぞれのレベルの知性を磨き、思考を深めるための、ポイントを述べておきましょう。

 第一の「思想」のレベルの知性を磨くためには、まず、我々の生きている世界や社会の変化、発展、進歩、進化の法則を学ぶことです。
 例えば、「ヘーゲルの弁証法」の「事物の螺旋的発展の法則」を学ぶと、世の中の変化が「右肩上がり一直線」ではなく、あたかも螺旋階段を登るように変化していくことが分かります。すなわち、これからの時代には、「古く懐かしいものが、新たな価値を伴って復活してくる」のですが、この法則を知っているだけで、これから社会に起こる様々な変化が「予見」できます。

 第二の「ビジョン」のレベルの知性を磨くためには、いま述べた「思想」と「法則」を用いて、社会の変化を「予見」することです。
 例えば、インターネット革命の結果、様々な分野で、螺旋的発展が起こっています。ネット・オークションとは、昔の競りや指値の復活であり、メールは、昔の手紙の文化の復活、eラーニングは、昔の寺子屋などの個別学習の復活です。自分の所属する産業や業界に、これからどのような変化がやってくるのか、これから何が起こるのか、それを語ることが、「ビジョン」です。

 第三の「志」のレベルの知性を磨くためには、「予見」し得る未来の選択肢の中で、どのような未来を実現するかという意志を定めることです。
 例えば、先ほどのような「未来予見」に基づき、ネットを使って、高齢者が、興味と能力、生活の都合に合わせて学ぶことのできる生涯教育サービスを提供しようと考えるならば、それは、まさに「志」です。

 第四の「戦略」のレベルの知性を磨くためには、まず、環境変化の激しい時代においては、「戦略思考」のパラダイムが変わることを理解することです。かつての戦略思考は、地図を広げ、登るべき山の頂上を見定め、計画的に、その頂きに向かって登っていくという「山登りの戦略思考」でした。
 しかし、これからの戦略思考は、刻々と変化する経営環境を敏感に察知しながら、瞬時に、そして柔軟に、戦略を切り替えていく思考、いわば「波乗りの戦略思考」が必要になっていきます。まず、このことを理解することが肝要です。

 第五の「戦術」のレベルの知性を磨くためには、「想像力」を鍛えることです。なぜなら、「戦略」と「戦術」の違いとは、単なるスケールの違いではないからです。すなわち、「戦術思考」とは、具体的な「固有名詞」を想像しながら状況の展開を予測することです。例えば、あの企業のあの役員に動いてもらうためには、まず、誰に働きかけるべきか。そのためには、どのような事前情報を入手すべきか。それをどう分析し、どう行動につなげるかといった「戦術思考」が、目の前の現実の変革のためには、極めて重要です。

 第六の「技術」のレベルの知性とは、企画力、提案力、営業力、交渉力といった言葉で表されるものですが、その知性を磨くためには、まず、「技術」の本質が、「言葉にならない智恵」であり、ただプロフェッショナルの書いた本を読むだけでは、決して、身につけることはできないことを理解しなければなりません。それを身につけるためには、その「技術」を実際にビジネスの現場で使ってみて、その経験を振り返り、反省することが不可欠です。そして、その「反省」という行為にも、極めて高度な技法があることを理解しなければなりません。

 第七の「人間力」のレベルの知性を磨くためには、まず、「ビジネスの現場における最大の説得力は、人間である」「何を語るかよりも大切なことがある。誰が語るかだ」といった言葉を、胸に刻むことです。
 そして、「技術」のレベルの知性を磨いていくと、必ず、「人間力」のレベルの知性も磨かれていきます。なぜなら、プロフェッショナルの世界には、「スキル倒れ」という言葉があるからです。すなわち、たとえプレゼンのテクニックやスキルは上手くとも、そのテクニックやスキルに溺れると、しばしば、「心が籠っていない」「上から目線だ」「買わせようという操作主義が強い」などの問題に直面するからです。そして、そのとき、我々は、心得、心構え、心の姿勢といったことの大切さを学び、人間を磨き、人間力を高めていくという段階に向かっていくことになるのです。

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「多重人格のマネジメント」が「多彩な才能」を開花させる

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