UI/UXデザインの基礎――どう「人間」を学ぶのか?
インターネット前提の現代社会。スマートフォンやタブレットなどを日常的に使う現代人の生活においては、これらのデバイスと使用するユーザーとの間に「インタラクティブシステム」が“当たり前”に存在するようになっている。
特に2000年以降となると、単なるグラフィックデザインではなく、操作性を含むデザインの需要が高まっていき、「身体性」が注目され、単なるデザインではなく、なんらかの体験を伴わせること、誘発させることを意図するようなものが模索されていた。
インターネット前提の社会で、デザイン、特にユーザーインターフェースデザインが少しずつ変わってきているなかで、応用としてのインターフェースデザインではなく、インターフェースデザインの基礎となるものは何かを私自身もかなり考えてきました。
2000年当時慶應義塾大学情報環境学部の1年生だった渡邊氏はインターフェースデザインを学ぶにあたっての自身の基礎となる教養、学術領域を探しはじめた。
デザインを学ぶことは「人間」を理解すること。そのために、まず、「現象レイヤ」「文化レイヤ」「社会レイヤ」と分けるといいなと思いながら、手探りで当時分けていったんですね。まず基礎となるのは「現象レイヤ」なのではと、「現象学」や「状況論」、「知覚心理学」、「認知心理学」、「生態心理学」など、色々学び始めたわけです。
現象レイヤを学んでいた大学2、3年の頃、渡邊氏は「Visual Haptics: カーソルによる手触り感提示システム」を構築した。これが、渡邊氏を自身のデザイン哲学における最重要キーワードの一つである「自己帰属感」に導いていく。
Visual Hapticsは何かというと、「コンピュータ上で触覚的な感覚を表現する」ことを意図したシステムです。カーソルをなぞるとカーソルの方が震えて、“ざわざわ”しているような感覚を与えるというものなどのシリーズをつくったんです。
このシリーズでは、ザラザラだったり、凸凹だったり、ベタベタだったり。すべて、視覚情報なのに“感触”があるものだった。
視覚上のことなんだけど“感触”がある。いったいこれはなんでなんだろうと。しばらくずっと問題意識として残っていました。