気合いだけではダメ、科学的経営の理論と実践を
——起業家育成のための教育について感じていること、ご自身が教育現場で具体的にされていることをお聞かせください。
本荘:
アメリカには昔から、社会人になってからも勉強しようという気運があるんですね。ところが日本では起業家を見ると、勉強する暇があったら「とにかくやれ」という。
ベンチャーは千三つなどといわれ、大抵が失敗します。そのなかで、なぜ失敗するか、どうやったら成功率が上がるかを知らずに気合いだけで勝てるわけがないのに、誤った認識を持っている人がとても多いです。
アメリカも昔はそれに近いところがありましたが、今世紀に入った頃からか、科学的に経営しないとまずいといった反省が出てきて、リーンスタートアップなど、理論がたくさん出てきていますね。「もっと賢くやろう、先輩の経験から学ぼう」という意識が定着してきています。最近は、セミナー、ビジネスプランコンテストも増え、状況は改善してきているとはいえ、この点に関して日本はきわめて遅れています。
多摩大学大学院のMBAコースは少人数で密着型な一方、学生の年齢、性別、業種は、他の大学院で教えた経験と比べても幅広い。教員も多様で実業の最前線に立たれている先生も多いですから、彼らをメンターにすれば強いですよね。今まで同質な人とばかり話していたという人にはとても鍛えられる場だと思います。
私のアントレプレナーシップのクラスはだいたい10人前後です。少人数で演習・議論してともに学び合うと、現実のアクションにつなげられる確率が上がります。
最初の着想から実際に事業を作っていく武器としての知識の講義もしますが、自分がアントレプレナー、イントレプレナーになったときの模擬スタートアップ体験をします。演習でユーザー候補にヒアリングしたり、スタートアップウィークエンド的な事業案の練り上げをやったりして、人と議論すると自分の最初のアイデアがどれだけ発展できるか、あるいはダメかを身をもって知り、仮説通りには行かないことの突破口を見つけていきます。
実際、競合の存在を知らずにプレゼンしてしまったり、ユーザーヒアリングでもろくな聞き方をしてこなかったりします。私や他の受講者がそれを指摘すると、いかに自分の情報に対する感度、レーダーの張り方が弱いかを思い知る。そうこうするうちに、恥はかき捨て、人の知恵はどんどん使えばいいというアントレプレナー的な姿勢にどんどん変わっていきます。会社を作るつもりできたわけではないクラスメイトも、現実にビジネスが生成されていくプロセスを目の当たりにして刺激を受ける。結果として、企業内で実際に自分のビジネスプランを幹部プレゼンした人、自分で会社を作った人、ベンチャーに転職した人も何人もいます。