東京2020をきっかけに「ギフティングサービス」を起案
──上松さんは現在どのような事業に携わられているのでしょうか。
上松桃子氏(以下、敬称略):私が所属するグループでは、「CHEER-FULL STADIUM チアスタ!」(以下、チアスタ!)というアスリート支援プラットフォームを自主開発し、運営しています。これは、「デジタル応援幕」を「チアスタ!」のサイトの中で作成し、アスリートに贈ることができるサービスで、応援幕や応援幕を装飾するスタンプ等を購入してアスリートに贈ると、購入金額の一部がアスリートに還元される、いわゆる「ギフティングサービス」です。
──なぜギフティングに着目されたのでしょうか。
上松:社会全体がマイクロスポンサーとして、夢に向かって挑戦するアスリートやマイナー競技に取り組むアスリート、スポーツクラブを支援できるようにしたいと考え、ギフティングサービスを立ち上げました。
サッカーや野球といったメジャーな競技のトップレベルで活躍しているアスリートやスポーツクラブは、放映権料やチケットの売上である程度の収入があります。一方で、マイナー競技はなかなか注目されず、仮にテレビで取り上げられても一過性のストーリー消費で終わってしまう場合がほとんどで、アスリートが夢を諦めざるをえなくなったり、経営難のクラブが消滅したりと、資金に関する課題がとても大きくなっています。また、アスリートを応援するサポーターも、チケットやグッズを買うくらいしか経済的な支援をする方法がありませんでした。「ギフティング」のサービスをつくることで、アスリートやクラブはファンエンゲージメントを高めつつ資金を調達できるように、サポーターは応援の気持ちを形にしつつ直接資金の援助をできるようになると考えたのです。
──マイナー競技を支援するサービスを立ち上げるにあたって、上松さん個人としての原体験があれば教えてください。
上松:元々DNPが東京2020 オリンピック・パラリンピックに協賛しており、私もスポンサーシップ推進の部署に所属していました。そこでの業務を通じて、パラスポーツを含め様々な競技があること、それぞれの競技で多くのアスリートが活動していること、活動する上で様々な課題を抱えていることを知りました。たとえば、この大会をきっかけにボッチャという競技の認知度は向上しましたが、選手に興味を抱いて検索しても簡単なプロフィールしか出てこなかったり、応援しようと思っても試合がいつどこで開催されているのかわかりづらかったりします。また、「テレビで見た」「人に連れられて一度観戦した」という経験があっても、「楽しかった」で終わってしまう人がほとんどです。そこから一歩進んで「もっと応援したい」と思ってもなかなか機会がないという状況を目の当たりにして、自分でサービスを立ち上げようと思うようになりました。