ソフトウェアに宿る開発者の“思想”と責任の所在
八田:正直、Signalが重視するプライバシーとAIの関連性についてあまり感じてはいませんでしたが、今のお話から関係があることがわかりました。現在の状況について考えてみると、AIの問題はフューダリズム(封建主義)にあると思います。フューダリズムは、大規模な投資ができる主体が大規模なリソースを有している状態であり、他の多くは“小作人”のように働く仕組みです。iPhoneやiPadでアプリを提供してユーザーに決済してもらう際、最大で販売額の30%が「App Store」の手数料となっている状況を見ると、権力が大企業に移行しているように見えます。
また、ソフトウェアには開発者の“思想”も実装されていると思います。たとえば、ビットコインもサトシ・ナカモトによる中央銀行への不信が現れているといえます。Signalの完全に通信を秘匿するべきだという主張も“思想”です。ソフトウェアが社会に大きな影響を与えられる現代において、その影響が技術者の良心・思想に依拠してしまうことが問題だと考えています。技術者が倫理に欠けていれば、私たちは脅かされてしまいます。