スタートアップのIR・開示「もっと戦略的に」
長谷川昌俊氏(以下、敬称略):企業価値の向上を目指すすべての企業にとって、IR・開示は力を入れるべき重要な取り組みです。資本市場が求める情報発信やコミュニケーションを怠り、適切に評価してもらえなければ、資金調達が滞り、企業は成長戦略を打つことができなくなっていきます。スタートアップにとって、これは命取りとなるでしょう。それにもかかわらず、IR・開示を単なるコストとして捉えてしまっている企業も少なくありません。
IR・開示を高度化すれば、企業の成長サイクルを速く、適切に回せるようになります。みなさんに、もっと戦略的にIRに取り組んでいただきたい。そんな想いで、経済産業省は2023年2月に『上場・未上場スタートアップのIR・開示に関するガイダンス』(以下、IRガイダンス)を発行しました。
嶺井政人氏(以下、敬称略):“戦略的に”というのがポイントだと思います。IRは「義務づけられているから(要求されているから)やらなければならない」のではありません。皆さんの企業が成長戦略を描き、加速させていくために欠かせないことです。
長谷川:ただ、そう簡単に上手くできるものではないのも事実。企業の成長フェーズごとに対話すべき投資家の属性は変わってきますし、求められるIR・開示の在り方も異なります。そこでIRガイダンスの中で、成長フェーズごとのIR・開示の方法、投資家の属性別の投資戦略などを一覧やフレームワークとしてまとめました。
三木俊人氏(以下、敬称略):「未上場」の世界では、情報開示のルールは特に定められていません。ですから、みなさん他の企業の開示を参考に自社の開示を行ったり、支援していただいているベンチャーキャピタル(VC)からのフィードバックを基に開示を行ったりと、各々が手探りでIRに取り組んでいることでしょう。また、体系的にIRの方法やノウハウを学べる機会・場所というのも少ないのではないでしょうか。そんな方々にこのガイダンスを役立てていただきたいです。