DXの成功に向けたロードマップ
ここまで見たように企業のDXには、デジタルネイティブな組織とそれを成し遂げるDX人材育成が必要となる。これを「DXを成功させるためのロードマップ」の観点から捉え直すと、DXの成功には「3つの壁」を乗り越える必要があると吉原氏は話す。
1つ目は「会社/組織横断の“アイデア”の壁」だ。ここまでには社員の意識醸成とリテラシー教育が必要となる。DXとは何か、何ができるのかを学習した上で、自社に合ったDXのアイデアが次々と出てくる組織にして、 “アイデア”の壁を乗り越える必要がある。
2つ目は「有望シーズの“投資判断”の壁」だ。集まったアイデアは玉石混淆であるため、その中から有望なものを拾い上げ、プロジェクト化する必要がある。ただ、アイデア検証や事業性評価の方法がわからず立ち止まってしまう企業は多い。
“投資判断”の壁を超えた後、3つ目の壁は「開発実装に向けた“技術開発”の壁」である。プロトタイプ開発からPoCのプロジェクト企画推進をすることで、この壁を超えていく必要がある。しかし、エンジニアが社内にいない、DXのプロジェクトをリードマネジメントしていくビジネス人材がいないといった理由から、プロジェクトが頓挫してしまう企業も多い。そこでSTANDARDでは、このような人材を育成するDXの内製化を推奨している。
STANDARDでは、この3つの壁を乗り越えてDXを成功に導きつつ、デジタルネイティブな組織作りとDX人材育成を同時に行うような支援をしている。STANDARDが自社でも新規事業を多数手掛けているからこそ可能となる、OJT的手法だ。
まず「アイデアの壁」を乗り超えるフェーズでは、約5時間のeラーニングを用意している。デジタル活用事例を48件用意し、“事例のシャワー”として浴びることで、「こういった形であればDXはうまくいくのだ」とDXの必要性やプロジェクトの進め方、組織の役割分担などのイメージを持てるようにするとともに、このeラーニングが終わった後で現場の課題意識をDXで解決できるアイデアを、受講生1人につき3つ集める。それによって、eラーニングをそれだけで終わらせず、プロジェクト創出につなげていくというものだ。
受講者から提出されたアイデアは、管理者がCSVでダウンロードすることもできる。そこから有望なものを自社で抽出することが可能だが、アイデアの分析が難しい場合はここもSTANDARDが支援する。新規事業がサービスにつながるものか、既存の事業の改善につながるものか、また収益インパクトはあるのか分析するなど、STANDARDのコンサルタントが有望アイデアの抽出支援を行う。
その後は「投資判断の壁」を越えるためのフェーズになる。ここではDXの中核となる組織横断メンバー向けに2日のDX施策立案ワークショップを行う。研修参加者自らが手を動かして具体的なDX推進アイデアを企画書に仕上げるワークショップだ。研修日の前後に2週間の宿題や振り返り期間があり、その間にSTANDARDのコンサルタントと壁打ちをしたり、調査を行ったり、ベンダーへの見積もりなどを行ったりして企画の精度を高め、最終日に10ページほどの企画書を仕上げてマネジメント層に向けてプレゼンをする。
技術の検証とソリューション抽出など、技術に関する知識は「投資判断の壁」を越える際にも必要だ。その意味で、「技術開発の壁」を越えるためのフェーズと「投資判断の壁」を越えるためのフェーズには重なる部分も出てくる。STANDARDは東大、早慶の学生で実践経験豊富なAIエンジニアを1,200人以上輩出する人工知能開発団体HAIT Labを運営しており、その知見と、自社での新規事業立ち上げ経験から「投資判断の壁」と「技術開発の壁」を突破するための支援している。