DX人材育成の課題と打ち手
デジタルネイティブな組織の実現にはDX人材育成は不可欠だが、この点に関しても多くの企業に「学んだスキルを活かす場がない」という共通した課題がある。教育機会を設けるも、本業に戻ると忙しさのあまりいつもと同じ行動になってしまうというものだ。
この課題に対する打ち手として吉原氏は、「プロジェクト組成」を提案する。STANDARDでは、教育を教育で終わらせないことを重視し、研修がそのまま最終的には実装につながるOJTの場、プロジェクト創出の場となることを目指している。
具体的には、研修を実務から切り離すのではなく、実務を題材とした業務効率化施策アイデアを考え、投資対効果の観点で採択されるようなものに仕上げ、実際の事業の効率化につながるような研修を行うのである。自分の実務の効率化を考えるため、受講生はモチベーションを高く保つことができ、具現化・最終的な実装につながりやすい。
こういったプロジェクト推進による小さな成功体験の積み重ねは、組織全体を変革することにつながる。
多くの企業は、理念や価値観の変容を行ってから、実質的な行動様式の変化を起こす、“積み上げ式”のアプローチでなければ変革は起きないと考えているはずだ。それは根本的で本質的ではあるももの、変革難度が高く、時間がかかる。それよりは現実的なアプローチで、顕在化している実務での課題をDXで解決するプロジェクトを創出して成功させることで、それを見て「自分もやってみようか」と前向きになる人を増やしていくことが重要である。これが積み重なると、全体の行動様式や理念・価値観が変わり、組織が変わっていくと吉原氏は説明する。
ただ、実務の効率化をDXで行うプロジェクトを繰り返すだけでは組織全体の変革にはつながらず、再現性のある仕組み作りが必要だという。具体的には、目指す人材像を定義し、その人材が具備すべきスキル・マインドの定義、そのスキルを習得するための教育カリキュラムを策定した上で、研修効果を可視化することを吉原氏は勧める。