「10倍挑戦、5倍失敗、2倍成功」
大企業がリーンなプロセスを事業に取り込む場合、大きく分けて2つのアプローチがある。一つ目は、現場を知る担当者レベルの人材によって改善を会社全体に膨らませていく「ボトムアップ」のアプローチ。二つ目は、企業の経営陣が一早く課題に気づき、上から改善をしていく「トップダウン」でのアプローチだ。
Lean Startup Japan代表の和波俊久氏が主催するイベント「Lean Startup for Enterprise Meetup」の第1回(前編・後編)では、リクルートキャリア細野氏によるボトムアップのプロセス改善について語られた。第二回目の開催となった今回は、トップダウンの事例として、2012年に経営が新体制に変わり、爆速経営というインパクトの残るメッセージを打ち出したヤフーによるプロセス改善が語られた。果たして爆速経営の裏側で一体何が起こっていたのか。
上司の役割を再定義する
2012年、15期連続で増収増益であったにも関わらず、なぜヤフーは新たなチャレンジを試みたのか。
2008年にiPhoneが発売されて以来、スマートデバイス化、ソーシャル化が進んでいた。Facebookをはじめとした企業が存在感をあらわにする中で、徐々に組織が硬直化しはじめ、停滞感が漂い始めていたという。そして、「爆速経営」や「スマデバファースト」をキーワードに打ち出した新体制がはじまったのだ。爆速で「10倍挑戦、5倍失敗、2倍成功」する。そんな新体制がつくられた。
新体制への移行と共に“ワークルール”の変革に関わった人財開発本部 本部長の斎藤由希子氏は人事評価制度を大きくカイゼンした。特に力を入れたのは、上司の役割を再定義したことだという。
5000人の社員で5000人の力を生むシンプルな仕組みを作ろうと考え、管理職の役割を『部下の才能と情熱を解き放つこと』だと定義しました。
その中でも興味深いのは、部下が上司を評価する多面評価を取り入れたことだ。「ななめ会議」と言われる施策では、上司がいないところで部下が集まり、上司について真剣に語りあい、それを本人にフィードバックするということを行っている。
勝つための「爆速の仕組み」を「爆速でつくる」
システム統括本部 技術支援本部 本部長である三宅敦氏は「爆速」の仕組みを作り上げた人物の一人だ。実は「爆速」という言葉が経営側から発案されてから、全社に「爆速」の仕方を伝えるまで1ヶ月しかなかったという。役員も含めた「爆速化会議」を一ヶ月の間に19回ほど行い、具体的な施策をはじめとした爆速化への仕組みも、まさに“爆速”でつくられていったという。
なぜ爆速化するのか?は、「ユーザーに良いサービスを速やかに届けることで勝つ」ということを当時の会議で決めました。爆速化しても負けるのでは意味がありません。爆速化の判断基準はここに置かれていました。