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小田急電鉄政光氏が語る、“対話”の全社的な浸透による組織風土と経営の変革

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 人口減少社会に入るなか、沿線人口の伸びとともに成長してきた鉄道会社もビジネスの変革を求められています。小田急電鉄株式会社はインフラ企業から「地域価値創造型企業」への変革を成し遂げています。小田急電鉄ではどのように変わって、新しい事業を生み出しているのか。株式会社ヒューマンバリューが主催した『GROW THE PIE』出版記念フォーラム─パーパスと利益の二項対立を超えて、持続可能な経済・経営を実現する─のセッション「インフラ企業が挑む『地域価値創造型企業』への変革ストーリー」の模様をレポートする。

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“対話”による事故防止と風土改革

 「『GROW THE PIE』出版記念フォーラム ─パーパスと利益の二項対立を超えて、持続可能な経済・経営を実現する─」の実践企業セッション1社目として、小田急電鉄株式会社でデジタル事業創造部 課長を務める政光賢士氏が登壇した。

 小田急電鉄グループは、「お客様の『かけがえのない時間(とき)』と、『ゆたかなくらし』の実現に貢献します」をグループ経営理念に掲げ、東京都と神奈川県を中心に、鉄道・流通・不動産・ホテルなど様々な事業を展開している。沿線人口は520万人、1日の乗降客数は184万人という規模の鉄道会社である。

 政光氏は「従来は人口増加と経済成長に支えられて成長してきましたが、2021年に『UPDATE 小田急 ~地域価値創造型企業にむけて~』と経営ビジョンを掲げたように、今まさにアップデートをしなければいけない局面にあります」と語る。ただ、新たな成長の種をまこうとしても、標榜するだけでなかなか実践に至らなかったという課題があるという。その理由が「組織風土の壁」だ。

「鉄道システムの安全な運行運営を実現するため、社内は管理主体のピラミッド構造になっています。鉄道会社の根幹として『安全第一』があるので、その他の事業も含め失敗を許容してもらえないカルチャーであるという“思い込み”が浸透していました」

 そんな組織が変わるきっかけになったのが、2005年のJR西日本の福知山線脱線事故を受けて2006年に導入された「安全管理規程」だという。これは、ヒューマンエラー防止の観点から管理を強めるための制度だったが、減るはずの事故が増えてしまったのだ。

 運転を担当している部門は「なぜ事故が増えているのか」を徹底的に議論した。そこで、ルールに縛られてしまい、運転士や車掌間の対話が減っていたことが原因として挙がったという。かつては、どの職場の休憩所にも置かれていた「だるまストーブ」を囲み、運転士や車掌の技術・スピリットの伝承を行う「ストーブ談義」が行われていた。それを参考に、若手社員と先輩社員の対話の場を設けることに。その結果、様々なプロジェクトが立ち上がり、事故が減少していったという。政光氏は、それを全社の中期経営計画の策定にも取り入れて、風土改革を進めることにしたと振り返る。

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上野 智(ウエノ サトル)

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