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シン・鬼十則

日本企業によるイノベーションに必須の「倫理規定」とは──これからの組織に欠かせないシン・鬼十“則”

第5回 ゲスト:AB社 小柳はじめ氏

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 昭和の時代に電通躍進の原動力となった「鬼十則」を、イノベーションの源泉となる「シン・鬼十則」として再発見する本連載。元電通マンで鬼十則を愛する蓮村俊彰氏が、令和の現代において「シン・鬼十則」的な活躍をしている方々に、その取り組みや考え方を伺っていきます。今回のゲストは株式会社Augmentation Bridge(AB社) 代表取締役の小柳はじめ氏です。1988年、電通に新卒入社し、マスメディア全盛時代にテレビビジネスの最前線で活躍。コーポレート部門で管理業務・財務会計を経験された後、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)制定の際には、広告業とは異なる、新しいビジネスモデルに新規事業開発部門に従事。その後、デジタル・アドテク領域の躍進の際に電通グループのサイバー・コミュニケーションズで副社長を務めた経験を生かし、2017年に勃発した電通の労働改革では陣頭指揮をとられ、RPA導入のほか、DXを推進されました。

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日本企業におけるイノベーションの困難性

蓮村俊彰氏(以下、蓮村):昭和63年(1988)に新卒で電通に入社して以降、テレビビジネスを皮切りに、時代ごとに興隆する台風の目のポジションから、社会の要請に応える事業を手がけられてきた小柳さんの考える「シン・鬼十則」の姿について伺っていきます。そこから、日本企業におけるイノベーションに関する議論が広がれば幸いです。

小柳はじめ氏(以下、小柳):イノベーションについては「日本における労働法制や雇用形態と、新規事業開発は二律背反である」という“そもそも論”があります。つまり、日本企業の現状では何をなそうとしても、構造的に無理があるということです。

 少し歴史の話をすると、まずマルクスが『資本論』で、資本主義の本質として指摘したのが「労働力の再生産」です。資本家とは、労働者を“殺さぬように生かさぬように”するものであること。労働者が日々の生活への感謝と共に朝に目覚め、働き、夜に眠り、次の労働者を産み育てられる程度の糧を得て、定年まで働き、その後少し生きて死ぬというのが、1960年代ぐらいまでの資本主義のモデルであったと思います。ちなみに、日本においてもそれを成立させるための制度が、年金等の社会福祉制度です。これらは共産革命を抑制するためのシステムとしても機能しました。

蓮村:なるほど。労働者が共産主義に恋い焦がれないように、肥大化した資本主義は福祉社会を築き上げ、労働者階級の満足度向上に努めてきたということですね。

小柳:そうです。加えて、日本では第二次世界大戦というファクターも加わります。国家総動員法のもと大政翼賛会による統制経済の旗振りで、社員の首切りがご法度となり、解雇規制や給与格差の縮小に至りました。現代日本における経済の仕組みは1940年にほぼできあがり、このときにできた制度が現在も色濃く残っています。

 実は、戦前の日本は原理主義的な資本主義社会でした。会社は株主のものであり、資本家と使用人は明確にわかれ、人材の流動性は極めて高く、終身雇用も存在せず、企業同士は熾烈に競争しあうものだったのです。しかし、戦争を口実に政府がそれらの統制を強め、当時の日本の労働者はこれを喜んで受け入れました。

 “生かさぬよう殺さぬように”労働者の満足度を向上させる。このフィロソフィーが根底に流れたまま日本企業がトランスフォーメーション、イノベーションを試みるのは、肥満体のままフルマラソンを走るようなもので、原理的に無理があるというのが私の考えです。

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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