ファミリーマートのデジタル戦略とDXの体制強化
田川啓介氏(以下、田川):デジタルに関する新たな取り組みやDXの体制強化について伺っていきますが、まずは事業についてお聞かせいただけますでしょうか。
石井努氏(以下、石井):2022年~2024年度の中期経営計画で以下の図を示していますが、今後人口が減少していく日本で成長を続けていくためにも、CVS(コンビニエンスストア)事業の基盤強化に加え、基盤を活用した新規ビジネスにも力を入れています。
私たちは全国に約16,300店舗を展開していることを一番の強みとしていますので、これをうまく活用して新たなビジネスを拡大していきたいということです。新規ビジネスのテーマは大きく3つあり、ファミペイをはじめとした「金融」、デジタルサイネージなど“店舗”をメディア化する「広告・メディア」、既存の事業基盤を活用して店舗を中心に据える「デジタルコマース」に取り組んでいます。
田川:図にも示されている「デジタルの最適活用」について伺います。DXには業務改革のような“守りのDX”と新規ビジネスのような“攻めのDX”があります。前者については店舗の業務改革に取り組まれていますし、後者については先ほど伺った3つのテーマで取り組まれています。それぞれどういった体制を作られているのでしょうか。
石井:当社では主にITシステムを取り扱う「システム本部」と、デジタル事業に取り組む「デジタル事業本部」があり、それぞれでDX人材の獲得を強化しています。
CVS事業は全国の店舗をITシステムでつなぐ必要がありますので、ベンダーさんに力を借りつつITシステムに多大な投資をしています。DX推進にあたっては、そこをベンダーさん任せにするのではなく、当社が主導して既存のシステムの品質向上や新たなシステム開発を進めていけるようにシステム本部の体制強化に取り組んでいます。
また、CVS事業の基盤を活用した新規ビジネスを拡大させるためには、既存事業とは異なるスキルセットを有する人材が必要です。そのような人材を「デジタル事業本部」に集め、組織の強化を図っています。
田川:新規ビジネスだけでなく、既存のシステムも、ベンダーに任せるのではなく、自前で人材を抱えて主導していこうという意思決定には、どのような背景があるのでしょうか。
石井:世の中の変化が加速し、新たなテクノロジーも次々と出てきている中、デジタルにより力を入れていく当社としても、全社的なリテラシーの向上や事業との相乗効果の最大化を実現できるように、DX人材の獲得強化とIT組織の強化に取り組むことにしました。