矛盾と向き合うリーダーシップ理論としてパラドックス研究に注目
──関口先生は、これまでどのような研究をされてきたのでしょうか。
経営における、人や組織の問題を中心に研究をしてきました。元々は、組織行動と人的資源管理という割とベーシックな内容でした。組織行動というのはリーダーシップ、モティベーション、意思決定など、組織における個人の行動の特性を理解し、それをマネジメントに活かしていきましょうという研究ですね。人的資源管理は、採用、育成、評価、賃金などの仕組みで人を動かすことで、それによって会社の業績をいかに高めるかという研究です。
そこからだんだんとグローバルな人的資源管理に関心が移っていきました。その中でも、とりわけアジアの重要性に注目しています。経営学は西洋に源流がありますが、国際社会におけるアジアの存在感が高まっていく中で、西洋の考え方だけで良いのか、経営にアジア的な視点をもっと取り入れられるのではないかという問いが出てきています。他に、AI、アルゴリズム、ロボットなどのテクノロジーが人の働き方や組織をどう変えていくのかということにも関心を持っています。
そんな中、京都大学の100%子会社である京大オリジナル株式会社の紹介で研修をさせていただいた、社会人向け教育サービスの提供を行っているアルー株式会社の方から「矛盾と向き合うリーダーシップ理論のようなものはないんですか」と問われたんです。パラドックス研究の存在は知っていたので「ありますよ」と答え、次の研修の内容に取り入れました。それをきっかけにパラドックス研究の奥の深さを知り、アルーさんもすごく興味を持たれたことから京都大学内に産学共同講座を立ち上げ、最近はビジネスパーソン向けに「パラドキシカル・リーダーシップ養成講座」というプログラムを提供しています。
──その講座の内容についても後ほどお伺いしたいと思います。人材開発、組織開発という領域でグローバルに目を向け、そこから逆にアジア的な発想に注目するようになったというのは、面白いですね。
パラドックスの考え方もアジア的だと感じていたところがあり、だから全てがつながっているんですよ。