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組織戦略としてのデザイン

なぜリクルートではボトムアップ型デザインが機能するのか──圧倒的な当事者意識という模倣困難な競争優位

【後編】ゲスト:株式会社リクルート 萩原幸也氏、磯貝直紀氏

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 リクルートのデザイン組織へのインタビュー後編では、自律分散的な組織文化に焦点を当てる。なぜ、リクルートではデザイナーが職務や職能を越境して、幅広い領域でデザインの力を発揮できるのか。その背景にある組織文化とは。デザインマネジメントユニットの磯貝直紀氏とブランドプランニングユニットの萩原幸也氏に聞いた。連載ナビゲーターは武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科教授(ビジネスデザイナー)の岩嵜博論氏。

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ボトムアップ型のデザインを支える「個の尊重」という価値観

岩嵜博論氏(以下、敬称略):前編では、リクルートのデザイン組織や、二つのデザイン部門の連携についてお聞きしました。そのなかで特に印象的だったのが、自律分散的な組織体制です。職種や役割を明確に決めなくても一人ひとりが柔軟に行動を変化させて、プロジェクトを推進していました。これは他の企業ではあまり見られない現象だと思います。お二人は、なぜそれがリクルートでは可能になると思いますか。何か思い当たる要因があればお聞きしたいです。

萩原幸也氏(以下、敬称略):それがリクルートの組織文化なのかなと。特に大きいのは「個の尊重」でしょうか。「個の尊重」はリクルートのバリューズの一つで、メンバー一人ひとりの好奇心や情熱を尊ぶ価値観です。そうしたボトムアップの文化が社内に深く根付いているからこそ、自律分散的な組織運営が可能なのだと思います。

 私自身もよく考えることなのですが、デザインはトップダウンで進めるほうが効率は良い。逆に、ボトムアップでデザインを改善するのはすごく大変です。しかし、だからこそ一人ひとりに裁量権が生まれて、役割に縛られず柔軟に動くモチベーションが生まれるのではないでしょうか。

岩嵜:今のお話はとても興味深いですね。というのも、例えばユニクロでいえば、佐藤可士和氏とジョン・ジェイ氏というカリスマクリエイターがブランドのデザイン全体をディレクションしているわけですよね。それがトップダウンによるデザインのモデルだとすると、リクルートはそれとは真逆のデザインを実践していることになります。となると、そこで求められるデザイナー像も一般的なそれとは、異なってくるように思います。

磯貝直紀氏(以下、敬称略):そうですね。トップダウン、ボトムアップのどちらにも長所と短所があるのは前提として、少なくとも私たちにはトップが決めた方針やコンセプトにそのまま従うという文化はあまりないですね。

萩原:私もそうです。実際に、私はリクルートに入社して18年が経ちますが、自律的に行動できる環境がなければ、仕事へのモチベーションを維持できなかったと思います。

磯貝:前編でもお話ししましたが、私が所属するデザインマネジメントユニットも、萩原のブランドプランニングユニットも職種を細かく分類していません。例えば、デザインマネジメントユニットのデザイナーは全員が「デザインディレクター」です。これは職種や役割に縛られることなく、一人ひとりが自らの経験やスキルを、目の前の仕事や課題に柔軟に接続するような働きを期待しているからです。こうした「染み出し」が求められるのが、リクルートのデザイナーの特徴といえますね。実際に、デザイナーを採用する際にも、基礎的なスキルはもとより、「染み出し」ができる人材かという点は重視しています。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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