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両利きの経営の鍵は既存事業のアップデート──東急の現役役員が語る、電車に乗らなくても儲かる事業構想

【第5回・中編】ゲスト:東急株式会社 常務執行役員 都市開発本部 副本部長 東浦亮典氏

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 本記事では、JIN代表理事の紺野登氏と東急株式会社 常務執行役員 都市開発本部 副本部長の東浦亮典氏が「既存事業のアップデート」について語り合った。対談では、紺野氏が両利きの経営において見過ごされがちな既存事業の変革の重要性を指摘。東浦氏は、東急におけるイノベーション事例を挙げながら、大企業が両利きの経営を実践するためのヒントを紐解いていった。

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東急の現役役員が語る「電車に乗らなくても儲かるビジネスモデル」の必要性

紺野登氏(以下、敬称略):JIN理事の鎌田(由美子氏)との「対談」では、鉄道会社における非鉄道領域のイノベーションについて議論されました。続いて、私からは鉄道事業、つまり「本業」のイノベーションについて伺いたいと思っています。

 というのも、コロナ禍によって私たちの価値観やライフスタイルは大きく変わり、鉄道という交通機関への捉え方にも変化があったからです。外出や移動が制限されるなかで、郊外と都心を繋ぐ、という従来型の通勤鉄道のあり方に見直しが迫られましたし、鉄道各社は鉄道周辺の事業や鉄道そのものの変革に取り組んでいる印象です。しかし、そうした変革の兆しは、実は以前から顕在化しつつあって、それがコロナ禍で加速したというのが、私の見立てです。

東浦亮典氏(以下、敬称略):東急が発起人として参画し、紺野先生にもご参加いただいた「クリエイティブ・シティ・コンソーシアム」は、まさにそうしたプロジェクトだったと思います。

紺野:おっしゃる通りですね。2010年にスタートしたクリエイティブ・シティ・コンソーシアムは、二子玉川をモデル地区にクリエイティブ産業の集積・発展を目指したプロジェクトでした。あれこそ社会的な変化をいち早く捉え、鉄道事業のイノベーションを推進したプロジェクトだったと思います。

 このとき、ポイントになったのが女性の存在です。今から十数年前には、すでに働く女性はかなりの数に達していましたが、郊外から都心へ満員電車に揺られて通勤する男性的なライフスタイルはまだまだ根強く残っていました。しかし、それではすでに多く存在する女性のニーズを捉えることができません。

 クリエイティブ・シティ・コンソーシアムは、二子玉川に活動拠点となるオフィス「カタリストBA」(2023年に閉鎖)を設置し、働く女性や第一線で活躍するクリエイターやイノベーターが地域コミュニティなどと連携するイノベーション活動が推進されました。東浦さんと知己を得たのはそのときがきっかけでしたが、クリエイティブ・シティ・コンソーシアムは社会的イノベーションのいち早いモデルケースだったのではないかと思っています。

「カタリストBA」
「カタリストBA」でのワークショップの様子

東浦:クリエイティブ・シティ・コンソーシアムは、従来は「働く場所」のイメージが皆無だった二子玉川に、多様なビジネスパーソンを惹きつけるきっかけになりましたね。事実、カタリストBAの契約会員は開業から数年で満員になりましたし、今や二子玉川はオフィス街としても知られる存在です。以前から東急はじめ私鉄各社は、通勤時間帯と帰宅時間帯で上下線のどちらかに乗客が偏ってしまうため「逆輸送解消」に課題がありましたが、都心からも二子玉川に通勤する人が増えることで、その問題の緩和が進んでいます。その意味では、クリエイティブ・シティ・コンソーシアムは、コロナ禍に先駆けて私鉄ビジネスモデルのアップデートを目指すプロジェクトになったと思います。

紺野:東浦さんはコロナ前の2018年に、鉄道会社の未来のビジネスモデルを構想する『私鉄3.0 - 沿線人気NO.1・東急電鉄の戦略的ブランディング』(ワニブックス)を出版されています。この本の帯には「電車に乗らなくても儲かる未来」と記されているのですが、この言葉はコロナ禍以降の事態を予言するものになりましたね。まさに、これからの鉄道会社は「電車に乗らなくても儲かる」ビジネスモデルを実現しなくてはいけません。「では、どうやって?」という点を本日は議論したいと思います。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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