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再現性のあるイノベーション経営の型

東急と元JR東日本の“非鉄道”領域のイノベーターが語った、サービス化するイノベーションへの脱却とは?

【第5回】ゲスト:東急株式会社 常務執行役員 都市開発本部 副本部長 東浦亮典氏

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 本連載ではJapan Innovation Network(JIN)の理事・アドバイザーをナビゲーターに、大企業において「システマティックなイノベーション」の創出に取り組むキーパーソンとの対談をお届けする。本記事のゲストは、東急株式会社 常務執行役員 都市開発本部 副本部長の東浦亮典氏。鉄道事業という確固たる柱を有しながら、まちづくりや生活サービスで数々の新規事業を生み出してきた東急。同社はどのようなアプローチでイノベーションを創出し、事業変革を成し遂げてきたのか。「次世代郊外まちづくり」など、数々の新規事業を手がけてきた東浦氏に聞いた。聞き手はJIN理事の鎌田由美子氏。

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バブル経済が「第3の柱」の生活サービス事業への投資の妨げに

鎌田由美子氏(以下、敬称略):現在、私はJINの理事も務めていますが、キャリアのスタートはJR東日本です。2001年に現在の「エキナカ」ビジネスの前身となるプロジェクトに携わり、鉄道会社における生活サービス事業の重要性や意義を、身をもって経験してきました。

 一方で、東急さんのまちづくりや生活サービス事業は、沿線との共生や利便性向上という観点で旧国鉄系の鉄道会社とはアプローチが異なる印象です。その点を本日はお伺いしたいのですが、まずは東浦さんのご経歴からお聞かせいただけますか。

東浦亮典氏(以下、敬称略):私は1985年に東急に入社しました。もともと、東急に興味を抱いたのは、実家が田園都市線の鷺沼駅にあったのが理由です。子どものころから東急ストアをはじめとした東急のサービスに慣れ親しんでいましたし、当時は沿線地域の都市開発が非常に活発な時期でした。地元周辺の山林がどんどんと宅地化され、4両編成だった電車も6両、8両と長大化されていく光景を目の当たりにしていたので、東急という会社には関心がありました。

 特に印象に残っているのが、1982年のたまプラーザ東急ショッピングセンターの開業です。それまではちょっとした買い物をするには二子玉川駅か、もう少し足を伸ばして渋谷駅に出なければいけなかったのですが、お隣の駅で買い物ができるようになったインパクトは大きかったですね。

 それがきっかけで商業施設の仕事に興味を持ち、生活サービス事業をやってみたいと東急を志望したのですが、入社後はなぜか鉄道と都市開発事業ばかり(笑)。若手時代から都市開発畑でキャリアを積んできましたが、還暦過ぎてやっと念願かなって2022年から2年間、生活サービス事業の責任者を担当しました。

鎌田:東急さんは不動産をはじめとして昔から生活サービス事業全般に注力していた印象です。

東浦:そうですね。ちょうど私が就職活動をしていた1983年には、ケーブルテレビ(CATV)事業、カルチャー事業、クレジットカード事業から成る「3C戦略」を打ち出し、「総合生活産業」を標榜しています。それまでは鉄道事業と不動産事業が収益の柱でしたが、鉄道や不動産などのハードに依存したビジネスは、伸び代に限界があることは当時から予想されていました。運行できる鉄道の本数には限界がありますし、開発できる土地も限りがあります。そのため、生活サービス事業を第3の柱にしなければならないという問題意識は1980年代からありました。

 しかし、そこに幸か不幸か、バブル経済が到来します。宅地価格は年を追うごとに高騰し、少しばかり住宅を供給すれば利益が出る状況になりました。そうしたなかで社内に慢心ムードがはびこり、この時こそ生活サービス事業に本来割かれるべきだった経営資源が、本格的に振り向けられることはなかったと思います。この時期の経営判断は、後々の事業構造にも影響を与えていますし、今なお生活サービス事業の成長の足枷になっていると思います。

東浦亮典
東急株式会社 常務執行役員 都市開発本部 副本部長 東浦亮典氏

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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