経理データを経営に活かす3つのポイント
松岡氏は、現在はマネーフォワードにおいて、経理データの戦略的活用に取り組んでいる。前職のソニーでは会計システム導入プロジェクトなど、幅広い業務を担当してきており、経理経験は26年間にのぼる。
経理には会計処理のプロセスの中で多くの取引データが集まる。この点は昔から変わらないものの、現在では非財務情報の増加や管理会計の複雑化、インボイス制度の導入などにより、扱うデータが多様で複雑、かつ膨大な量になっている。
経理データをどのように経営に活用するかについて、今回、松岡氏は以下の3つのポイントに焦点を当てて講演を行った。
- 経営レベルでデータを活用しPDCAサイクルを回す方法
- データを用いて経営のガバナンスを向上させる方法
- 生成AI時代のデータ活用方法
会計情報は“生鮮食品”のように扱い、1つの正しいデータを皆で共有する
まず、松岡氏は経営管理に必要な経理データの収集および加工のプロセスで起こりがちな問題点を挙げた。
経理部門の主な役割は、会社全体の会計帳簿を締め、税金の申告を適切に行うことだ。会社法などの関連法規を遵守することが求められるため、どうしても多くの労力が割かれる。その結果、会計データを正確に処理する一方で、そのデータを経営に活用することは後回し、あるいは経営企画など別部門の担当となってしまうことがある。
また、戦略上重要なデータであっても、タイムリーに経営者に提供できない場合、意思決定には活用できない。「会計情報は生鮮食品のようなものだ」と同氏は語る。データが古くなればなるほど活用は難しくなるのだ。
さらに、全社でデータが標準化出来ていない場合、本来は同じ数字が出るはずのところでも、部門ごとに異なる結果が生まれてしまうことがある。この不整合を修正するのは組織運営上、大きなコストとなる。また、事業やグループ会社が増えると、経理システムやプロセスの統一が難しくなり、データを用いて全体を見渡すことはさらに困難になる。
これらの問題に対処するために、松岡氏は、「SSOT:Single Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)」という考え方を提示する。正しいデータは一つしかない、という考え方のもと、同じデータを全社員が活用したうえで、適切な意思決定を行うことが重要だと述べる。