正確性向上、コンプライアンスとガバナンスの強化もデータが鍵となる
松岡氏は、次のポイントとして、データを用いた正確性向上、コンプライアンスとガバナンスについて説明した。
同氏によると、現場の担当者が支払依頼をシステム上で作成するようになったことで、従来の経理部門が担当していた時代と比べて、科目や部門の選択がより正確になったという。現場の担当者は、前月の支払依頼を複写して当月の伝票を作成するようにしており、科目が急に変更されて担当者と経理が確認をしなければならないといった、無駄なやり取りが大幅に減少したという。前月まで蓄積されたデータが正確性向上に寄与している事例である。
また、同氏はインボイス制度への経理部門の対応についても言及した。この点についても、インボイス登録番号がクラウド上でマスターデータとして登録され、翌月以降も正確性が保たれる仕組みが整っている。データが蓄積されていけば、時間が経つほどに処理は容易になる。手作業で行っている企業では、手間が多い上、こうした蓄積は得られない。無形資産としてのデータの価値を実感していると同氏は語る。
すべての伝票を細かくチェックすることは経理業務の基本ではあるものの、完璧に行うことは極めて難しい。そこで、松岡氏はデータを活用したチェック業務の強化を提案する。具体的には、消費税区分のチェックや、インボイスの伝票をマスターデータと照合するといった作業にデータが活用できる。
また、法人カードで既に支払い済みの領収書を流用し、個人で支払ったように再申請するケースを防ぐこと、勤怠データと経費データの照合による誤謬・不正リスクの高い伝票をデータから抽出し、集中的にチェックを行うこともできるという。
システムの活用状況のチェックも重要である。導入したクラウドツールの便利機能がどれほど活用されているかもまた、データを分析することでその状況を把握することができるという。
実際、『マネーフォワード クラウド経費』では、EコマースサービスやモバイルSuicaなどとの連携を活用する機能があったにもかかわらず、改善活動をする前のマネーフォワードでは全明細の3割程度しか利用されていなかったという。
データ連携ができるにもかかわらず手入力を行っている担当者をデータから特定し、連携方法の個別指導を行うことで、データ連携比率を7割ほどまで向上させ、効率化や正確性の向上を図ることができたという。松岡氏は「システムは導入するだけでなく、活用することが重要である」と強調する。
また、同社では、約2年前に自社プロダクトの法人・個人事業主向けビジネスカード『マネーフォワード Pay for Business』を導入。カード利用明細がリアルタイムで経費精算システム『マネ―フォワード クラウド経費』と連携できる仕組みを構築したが、当初はこのシステムが十分に活用されていなかったという。
そのため、データ分析によりビジネスカードの適切な利用シーンを特定し、特にタクシー利用などの大きな金額がかかる場面でのカード利用を推奨したという。