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再現性のあるイノベーション経営の型

経営の短期思考に抗うための仕組み・人材・環境とは──経営者イノベーション・ラウンドテーブル【前編】

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トップ自らが覚悟を持って変革を牽引する

 どのようなイノベーションにも、企業トップのリーダーシップが不可欠だ。R&D部門や担当者に任せるだけではなく、トップ自らがビジョンを掲げ、共感を得ることが重要である。経営者の情熱が、社内やエコシステム全体を動かす力となる。これはスタートアップにおいても大企業においても、共通する成功要因であり、システムや仕組みはあくまでサポートとして捉えられるべきだと議論された。

 特に既存事業が好調な時期には、守旧派の力が強くなり、変革が進みにくい。経営者自らが先頭に立ち、変革を進める決断力が求められる。ある企業では、ポートフォリオシフトに伴い、経営陣の多様性を確保するため、外部人材を積極的に採用した。その結果、さまざまな意見や経験を持つ人材を集めることに成功したという。

 こうした変革には、経営者の「アニマルスピリッツ」とも言える強い意志と覚悟が必要である。若い時期に失敗を経験し、それを乗り越える耐性を養うことが重要である。

既存事業の変革と新規事業の立ち上げという両利きの経営

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 また、清水宮司が挨拶で言及した「変わらないために変わり続ける」という視点は大きな共感を得て、さらに掘り下げた議論も行われた。ある参加者は、既存事業に固執した結果、業績が悪化した自社の過去を振り返り、継続的な変革の重要性を強調した。また、安定した主事業を基盤に、周辺ソリューションを開発し相乗効果を生み出さなければ、屋台骨が傾く可能性がある。この際、基本的なミッションや大目的から逸脱しないことが鍵となる。実際、この企業では技術投資や研究開発、DXによる社内改革を積極的に進め、既存事業を強化している。既存事業も新規もともに新たな文化が必要だ。

 他にも、既存事業内でアジャイル手法を取り入れている例も共有された。実際に「地道なイノベーション」が多く生まれているという。経営者に求められるのは、これらの挑戦、そして改善をイノベーションとして積極的に評価することだ。

 一方、規制が多い業界の企業においては、とくに安全が重視される事業部では保守的な文化が根強いという。当然、これは安定・安全性を維持するために必要な文化である。ルールに則った確実な実行、また先述のようなトップの交代に影響を受けない安定した業務遂行はときに強みとなるのだ。

 とはいえ、新たな顧客ニーズに対応するためには異なる文化が必要だ。だからこそ、異なる文化を持つ新規事業推進チームを設ける「両利きの経営」が重要だとされた。経営者には、それぞれに適した人材を確保し、二者の役割を明確にし、その理解を浸透させることが求められる。

 ある参加者は「経営者の役割は明日の仕事を作ること」だと語った。特に大企業では、既存事業からの懸念の声がよく上がるため、リーダーが覚悟を持ち、経営リソースを投入して自ら変革に挑戦し続ける姿勢が求められると指摘。トップの決断力こそが、企業を次のステージへ導く鍵だと強調された。

 ラウンドテーブルは、2つめのテーマである「システマティックなイノベーション」や「イノベーション・マネジメント」に関しての議論へ移った。

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最初のラウンドを振り返って(紺野登)

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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