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新規事業開発マネジメントの要諦

新規事業がうまくいかない“3つの壁”を乗り越えるには──不確実性をコントロールする戦略・組織・実行

第2回

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 本連載では、日本の大企業からベンチャー・スタートアップまで幅広い企業の新規事業開発の現場に携わってきた筆者の経験や視点から、VUCA時代と称される現代の経営における新規事業開発やイノベーション創出への取り組みをご紹介。現場の新規事業開発の責任者や担当者だけでなく、それを牽引しマネジメントする立場にある方々にとっても重要なエッセンスについて、新規事業開発プロセスの全体像や各フェーズにおける課題や解決アプローチを考察していきます。第2回となる本稿では、そもそも企業が新規事業に取り組む上で必要な戦略や方針をどう設計していくか、またそれを実現する組織や実行力をどのように実装していくべきかについて触れます。

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既存事業とは大きく異なる新規事業の“不確実性”

 企業における新規事業開発がうまくいかない理由を考察する前に、まずは企業内において大半の人が関わる既存事業の運営と、新規事業開発において大きく異なる“前提”について理解を深める必要があります。

 新規事業と既存事業では事業の検討の仕方でも、検討した内容を実行する組織や体制でも、あらゆる面で大きく異なります。それぞれの観点における主要な違いをまとめたのが下記の表です。

クリックすると拡大します

 これまでの事業運営によって得られた経験や実績が豊富な既存事業とは異なり、新規事業開発では、そもそも対象となる市場や顧客が不明確であるケースが大半です。それゆえに市場や顧客に関するデータや情報が皆無に等しい状態で検討を進めなければならないことになります。そのため、精度の高い事業プランや計画を立てることは困難であり、必然的に事業の不確実性が高くなります。この不確実性の高さゆえに成功確率が非常に低い挑戦となり、取り組む領域や事業内容、成功の定義にもよりますが、センミツ(1,000に3つ=0.3%)と表現されることすらあります。つまり、その大半は失敗に終わるのです。

 このような前提の中、ゼロから事業を立ち上げ、進捗やKPIを観測しながら試行錯誤を繰り返していく必要があります。故に、既存事業と比較すると成果を創出して企業や業績に貢献するまでには数多くの挑戦と長い時間を要します。そのため、短期の時間軸や単一の挑戦のみで成果や評価を見極めるのではなく、中長期の目線に立って、多くの事業を産んだ結果としてわずかな成功が生き残る「多産多死」を前提に事業を捉えていく必要があるのです。そして、多くの挑戦と失敗を繰り返しながらその成功確率を高めていくことが重要です。

 また、前述の通り、非常に不確実性が高い挑戦である新規事業開発では、最初から多くの予算やリソースを投下することは現実的ではありません。そのため調査や分析・計画を重視するのではなく、アイデアや仮説の構築とその検証結果を踏まえた方向転換や軌道修正を重視することが適切なプロセスになります。

 さらには、このプロセスを素早く行えるチームや人材を抜擢・配置することが重要であり、既存事業とは求められる定義も大きく異なります。新規事業開発では、日々変化する事業の検討状況や進捗に柔軟に対応するため、少数精鋭のチーム内で一人一人が多数の役割や機能を担う必要があります。そしてそのような対応や判断を自分たちで行い、常にチームでやるべき仕事ややり方を考えて創り出せる自走力が求められるのです。

 このように既存事業と比較すると様々な前提が異なり、不確実性が大きく異なるのが新規事業開発です。それでも、企業は常に挑戦し続けなければなりません。

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この記事の著者

北嶋 貴朗(キタジマ タカアキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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